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王志玲は数日前まで俺の彼女の一人だった。
名前はガッツリ台湾人だけど、本人は日本育ちだから台湾のことはあまり知らないらしい。
黒髪をボブカットにしていて、吊り上がった細めの目に泣き黒子がオリエンタルっぽくてなかなかの美人だった。
金持ちの家の箱入りお嬢なんだそうで、ちょっと優しくしてやったら簡単に釣れた。
アッチの具合は最高だったけど、付き合ううちにオカンみたいに口うるさくなって、そろそろ別れようとしていたんだ。
「ふざけんなよ! 王ちゃんがお前のことどんだけ好きだったか……」
「知ってるよ。お前があの子にホレてて、相手にされなかったのも知ってる〜」
剛は彼女が俺と付き合い始める前から少人数の講義内での知り合いで、真面目で清楚なところにベタ惚れだったみたいだ。
だから俺と付き合い始めたと知った時はスゲぇ落ち込んでた。
「残念だったよな。生きてりゃお下がりでも充分楽しめたのによ。アイツ、最初処女で全然だったけど、丁度いい具合に俺に開発されてたから、口うるさくなきゃもっと遊んで……」
最後まで言う前に大振りの右フックが飛んでくる。
ケンカ慣れしてないやつの拳を食らうほどニブくはない。
きゃあと叫んで真由美がベンチから逃げ出す。
「危ねーな、彼女にあたったらどうすんだよ」
俺がひょいと避けると、勢い余った剛はそのまま地面に転がった。
「まあ落ち着けって。いい娘いたら紹介してやるからさ。ほら、俺って親切だから」
ちょっと良いなと思ってた娘が死んで、あいつも気が動転してるんだろう。
今までだってこんな事は何度もあって、それでも剛は友達のままだった。
すぐに修復出来る、俺はそう思っていた。
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