【手紙 Side・剛】

3/3
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
悲しんでいるなどという嘘をつかなければ良かった。 後悔しても仕方ないので、せめてどうにか誤魔化そうと同行を申し出たが、彼らはそれを断る。 「他にも友人は多い。その全てを連れて行くわけにはいきません。坂井さんだけをお連れしてしまうと、他のご友人に申し訳が立ちません」 確かに彼女には大学内だけでも多くの友達がいた。 誰からも好かれる女性だったのだ。 「……わかりました。渡しておきます」 あんな奴が彼女の葬儀に呼ばれることに釈然としない気持ちと、奴が何か失礼をするのではないかという不安を抱えながら俺はその封筒を受け取った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!