24人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はあの日、封筒を受け取った後のことを何度も思い出す。
家に帰ってすぐに俺は受け取った封筒についてネットで調べた。
あの中華風の封筒は、あまりにも葬儀という場にそぐわない気がしたのだ。
目にも鮮やかな赤い封筒、それの意味を知った時、絶対に和樹に渡さなければいけないと思った。
家父長制度の強い台湾では未婚の女性が亡くなると人として扱われない。
成人していない、つまり人となっていないと見なされる。
そのため墓に弔うことが出来ず、家に災いをもたらすと言われている。
それを防ぐために冥婚という制度があるそうだ。
つまり亡くなった娘と誰かを娶せ成人とする文化。
当然だが現代では相手を死なせるような事はないが、死者の骨や遺体を買ったりする土地もあるという。
王志玲の実家は台湾でも古くから続く家であり、恐ろしくしきたりを重んじると聞いていた。
彼女はそんな家を嫌って、大学を出たらひとりで暮らしたいと言っていたのだから。
和樹に渡されたあれは『紅包』といって、御祝儀を入れる袋。
そこに写真やお金などを入れ、相手が受け取ると、冥婚を承諾したことになる。
つまり和樹は何も知らず台湾へ行き、そこで彼女の婿として結婚をさせられたのだ。
そして古くからの慣わし通り、彼女の遺体と共に土葬されたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!