【リセマラ勇者を許さない】

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「終わった」  虚無空間に私の独り言が響く。復讐を終えれば少しは救われるかもしれないと思っていたけれど、全然そんな事は無かった。 「ねえ。私、頑張ったよ。魔王どころか勇者まで倒しちゃったんだから」  ちゃんと強くなった。弱虫じゃなくなった。なのに何で褒めてくれないんだろう。  ……今となっては分かる。彼はきっと心の深い所でこの世界の真実に気付いていて、私がプレイヤーに選ばれるように、私を守るために、強いキャラクターにしたかったのだろう。  でも、強いだけじゃ駄目らしいよ。猫耳とか爆乳じゃないと。そう言ったら彼はどんな顔をするかな。 「……一人は、嫌だな」  憎むべき相手が消えたら、愛すべき人が再び心を占め始めた。胸が詰まり呼吸が下手になる。……久しく忘れていた感覚。私の頬を、何百年ぶりかの涙が伝った。『泣き虫だな』なんてぶっきらぼうな声を期待するが、誰もいない終焉は静寂に満ちたまま。  どうしてこんな事になってしまったのだろう。私は口うるさい幼馴染と勇者ごっこをして、兄の作るあったかいご飯を食べていられれば、それだけで良かったのに。 「ねえ。泣いてるんだから、早く来てよ」  そして不器用に、優しく叱って欲しい。じゃないと干からびてしまう。  ――涙で滲んだ冷たく暗い世界に、光が溢れた。  散らばった無数のクリスタルが、私を慰めるように輝いている。一つで世界を手に出来る力があるというクリスタル。それがこれだけあるのだから、世界を変える位の奇跡を見せてくれてもいいんじゃないだろうか。  私は、手を組んで目を閉じ、ひたすら祈り続けた。  永遠に等しい時間の果て。  私は自分の頭に触れる暖かな手に、泣き虫になる。  ずっと呼べなかった彼のが、ようやく口をついた。
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