【リセマラ勇者を許さない】

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 突然壊れてしまった世界で、私は毎日泣き続けた。どうして私一人だけ? 孤独に気が狂いそうだった。自ら命を絶とうともしたが、私を思い留まらせたのは、消えてしまった彼がまだどこかに居るのではないかという……望みともいえない夢。    ハルトを探す旅に出た私は、どこまでも歩き続けた。そして世界の果て、遂に自分以外の動ける人物に出会う。それは人間ではなく魔王だったけれど。 「待っていたぞ、勇者よ」 「……私は、勇者じゃ、ない」  久しぶりに発した声は掠れていて、自分のものとは思えなかった。荒廃した地に座り込む巨大な獣。その圧倒的な存在感は、彼が魔王であると私の本能に報せる。魔王は項垂れていた顔を上げてギョロリと私を見た。睨みで人を殺せそうな迫力だが、途方もない孤独よりは恐ろしくない。それに泣いたって、もう誰も助けてくれないんだから。 「お前が勇者で無い事は分っている。ただ、辿り着いた者には言わねばならぬ決まりなのだ」 「決まり? あなたは、何か知ってるの? 時間が止まってしまった事、どうして私達だけ……あの声は……ハルトは?」 「――そうか。お前も“あの声”とやらが聞こえるのだな。ならば教えてやってもいいが、条件がある」 「条件?」 「我を殺してくれ」  悲しい響きの魔王の懇願(こんがん)。それに私は呆然とし、同情を抱く。まるで自分の心の声を聞かされているみたいだった。 「我は勇者に倒されるべき最大の敵。その為だけの存在。勇者の居ない世界ではまともに生きる事も死ぬ事も出来ぬのだ。望みをかけてクリスタルを集めたが、何も変わらなかった」  魔王は大きな手を広げる。そこには欠片が集まり、完成しかけのクリスタルがあった。 「クリスタルは全てを知っている。知りたければ我を殺し奪うがいい。さあ――勇者ならざる者よ、我と戦え!」  クリスタルを飲み込んだ魔王の体が膨れ上がり、山のような怪物になる。おびただしい魔力が渦巻くが敵意は感じられない。ようやく見つけた仲間と戦いたくない気持ちと、真実を求める気持ちがせめぎ合う。だがどちらにしろ、死を望みながら向かってくる相手を殺さず往なすことは難しかった。  私は、また一人になる。奪ったクリスタルにずっと持っていた欠片を合わせると、完全な一つとなった。その瞬間、クリスタルは眩い光で私を包み込む。……クリスタルを手にする事は、世界を手にするも同義。全知全能のクリスタルは私に全てを教えてくれた。  ――この世界と、私達の存在理由。世界が壊れた原因。彼が消された訳。倒すべき真の敵の姿。  恐らくこの世界で最も高い魔力を持つであろう魔王は、外界の、俯瞰する存在に気付いてしまったのだ。私があの声を聞いたように。魔王は壊れた世界を直そうとクリスタルに縋り、この残酷な真実を知って、望みも気力も失ったのだろう。けれど私は、もう死んでなどいられなくなった。 「絶対に、許さない」

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