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取り敢えず、美少女を近くのベンチに座らせると、近くの自販機で買ってきたジュースを渡し、何とか対話を試みる僕。
一方、缶ジュースを受け取った美少女は、暫し不思議そうに缶を眺めていたが、やがて缶をずいっと僕の方に突き出して来た。
「開けなさい」
あくまで居丈高にそう告げて来る少女。
僕は仕方なく缶を開けると、彼女にそっと差し出した。
少女はその缶に顔を近づけると、一気にジュースを喉に流し込む。
「コレは知っているわ。ジュースって言うんでしょう?いつも、人間が私の下で飲んでいるもの。あ、開け方が分からなかったんじゃないからね?!あんたが開けたそうにしてたから、開けさせてやっただけなんだから!」
――果たして僕はそんなに缶を開けたそうにしていたのだろうか?
と、まぁ、そんな素朴な疑問はさておき。
実は僕は、彼女の今の台詞の中で、幾つかの単語に引っ掛かりを覚えた。
先ず、『人間』。
これではまるで、彼女が人間ではないかの様な物言いだ。
それに、『私の下』という単語も気にかかる。
言葉通りに受け取るなら、彼女がまるで、人間より大きな存在であるかの様な言い方だが――。
僕の目の前にいる彼女は、どう見ても小学校低学年位の小さな女の子だ。
どう考えても、そんな大きな存在には見えないが……。
そこまで考えて、僕ははっとする。
(もしかして、この子……ふざけて大人をからかってるとか?)
実際、有り得ない話ではないだろう。
大方、家族でお花見に来たが、あまり構って貰えなくてつまらなくなり、周囲の大人をからかいに来た、というオチか。
そうと決まれば、やる事は1つだ――。
「あのね、お嬢ちゃん?あんまり大人をからかったら駄目だよ」
僕は周囲を見回し、彼女の両親を探してみる。
が、それらしき人物は見当たらなかった。
と、なると――。
(まさか、僕に絡んでいる間に……この子の両親は、この子を置いて帰っちゃったのか?!)
本来なら、有り得ない。
だが、お花見の席でなら話は別だ。
酒に飲まれた大人が正常な判断力を失くす話なんて、昔から腐る程ある。
(取り敢えず、この子を警察に連れて行かないと……!)
僕は、ジュースに夢中になっている少女に視線を戻した。
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