桜子さんはお花見がしたい

4/15
前へ
/15ページ
次へ
すると、まるで僕の思考を読んだかの様に、少女が思ってもみないことを告げて来た。 「アンタさぁ、無駄よ?私を警察なんかに連れて行ったって」 ――だって私、迷子じゃないもの。 そう言うが早いか、ベンチの上に立ち、ひょいと跳ねてみせる少女。 瞬間、彼女の体は、吸い寄せられる様に上空に舞い上がって行った。 そうして、 「ね?こんなコト、人間には出来ないでしょう?」 桜の木のてっぺんにつま先だけで立ちながら、そう笑う少女。 ちなみに、周りの花見客には、何故かこの少女の姿はおろか、彼女のこの行動すら見えてはいないらしい。 あまりに突然すぎる出来事の連続に、思考が完全に停止してしまう僕。 と、今度はひらりと――音もなく、少女が僕の目の前に舞い降りて来る。 そして、その白くて細い人差し指を僕に突きつけながら、再度、こう語りかけて来た。 「いい?別に、アンタをどうこうしようっていうんじゃないの。私はね、ただ、人間と同じ様にお花見がしてみたいだけなのよ」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加