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すると、まるで僕の思考を読んだかの様に、少女が思ってもみないことを告げて来た。
「アンタさぁ、無駄よ?私を警察なんかに連れて行ったって」
――だって私、迷子じゃないもの。
そう言うが早いか、ベンチの上に立ち、ひょいと跳ねてみせる少女。
瞬間、彼女の体は、吸い寄せられる様に上空に舞い上がって行った。
そうして、
「ね?こんなコト、人間には出来ないでしょう?」
桜の木のてっぺんにつま先だけで立ちながら、そう笑う少女。
ちなみに、周りの花見客には、何故かこの少女の姿はおろか、彼女のこの行動すら見えてはいないらしい。
あまりに突然すぎる出来事の連続に、思考が完全に停止してしまう僕。
と、今度はひらりと――音もなく、少女が僕の目の前に舞い降りて来る。
そして、その白くて細い人差し指を僕に突きつけながら、再度、こう語りかけて来た。
「いい?別に、アンタをどうこうしようっていうんじゃないの。私はね、ただ、人間と同じ様にお花見がしてみたいだけなのよ」
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