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「……と、いう訳で、こちらがお花見をしたい上野の桜の花の精霊、桜子さんです」
正座をし、改まってそう言いながら、隣でふんぞり返っている少女を目の前にいる女性に紹介する僕。
ちなみに、此処は僕の家で、目の前の女性は同棲中の彼女だ。
では、何故、そんな所にこの少女がいるのか。
それは、他ならぬ僕が連れて帰って来てしまったからである。
少女からは、確かに人間離れした運動能力を見させられた。
話している内容からしても、恐らく僕達人間とは違う種族なのだろう。
だが、それでも、(見た目は)幼い子供なのだ。
こんな小さな子供を、たった1人だけで夜の公園に置いていくことなんて、僕にはどうしても出来なくて、一緒に連れて帰って来てしまった、という訳である。
その時、上野から一緒に帰る道すがら、少女から聞かされた彼女の正体が、上記の【上野公園の桜の花の妖精(あくまで花の方の妖精であって、木の妖精ではないそうだ)】の【桜子さん】という事なのだ。
ちなみに、姿のオンオフも可能な様で――彼女の姿が香澄に見えて、公園の酔客達に見えなかったのは、彼女がオフにしていたかららしい。
しかし――。
「ビールが脳にまでキマっちゃったのかな?取り敢えず、警察に通報するね!もしもーし、おまわりさーん、彼氏が幼女を誘拐してー」
僕のいう事を華麗にスルーし、サクッと通報しようとする僕の彼女、柳 香澄。
まぁ、自分の彼氏が深夜にいきなり見知らぬ幼女を連れて帰ってきたら、そりゃぁ普通に驚くだろう。
僕は彼女の内心を察しつつも、取り敢えず説得を始めた。
「お願いだから聞いて!これには深い訳があるんだ!」
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