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その後、僕の粘り強い説得と、何より――桜子が香澄の目の前で能力を使用して見せたことにより、桜子が妖精であると信じてくれた香澄。
彼女は、僕と桜子に夜食を出しながら、ふとある疑問を口にした。
「でもさぁ?桜子ちゃんが桜の妖精さんなのは分かったとして、何でお花見をしたいのかな?だって、桜子ちゃんは桜の妖精なんでしょ?それって、満開にになったら特等席で見てる様なものなんじゃないの?」
すると、何処で覚えたのか――己の口元に人差し指をあて、「チッチッチッ」と言い出す桜子。
少女は少しだけふんぞり返ると、やや偉そうに彼女なりの持論らしきものを語り始めた。
「確かに私は桜の妖精だから、満開の桜を特等席で味わえるわ。でもね!それは私がしたいお花見じゃないのよ!私も人間みたいに、家族や仲間と桜の下に集まって、沢山のご馳走を食べたり遊んだりしてみたいの!妖精仲間は元から、人間の真似事になんてあまり興味はないから誘っても来てくれないし……何より、幾ら特等席でも、一人だけで見る桜は寂しいのよ」
なるほど。
確かに桜子の言う通りかもしれないと思う僕。
僕も昔、誰とも予定が合わず、一人だけで王子の桜を見に行ったことがあるが、なんとなく物悲しいというか……寂しい雰囲気がした。
やはり、友達や大勢と見る桜と、たった一人だけで見る桜では、色々違う事を感じるのだろう。
たった一人だけで、桜の木のてっぺんから桜と……楽しそうに宴をする人間達を見下ろす桜子の姿を想像し、何とも言えない気持ちになる僕。
すると、香澄も同じことを感じたのか、優しく桜子さんを抱き寄せる。
そうして、その小さな頭を撫でながら、微笑んだ。
「よし、分かったよ!なら、お姉さんとお兄さんが、桜子ちゃんを最高のお花見に連れて行ってあげよう!」
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