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「本当?!嬉しいわ!約束よ!翔、香澄!」
とても嬉しそうに、きらきらとその新緑色の瞳を輝かせながら、香澄を見上げる桜子。
そう告げるや、桜子は己の両手の小さな小指を「んっ!」と香澄と僕の方に差し出してくる。
どうやら、指切りがしたい様だ。
僕と香澄は桜子を真ん中に、一緒に歌いながら指切りをした。
(もし、僕達の間に子供が生まれたら、こんな感じなのかな?)
楽しそうに指切りの歌を歌う香澄と桜子を見つめながら、そんな未来を想像する僕。
と、香澄の膝の上に座らせて貰った桜子が、不意に「あっ!」と声を上げた。
「私ね、もう一つやってみたいお花見があるの!聞いてくれる?」
(やってみたいお花見?)
一体どんな事だろう?
興味をそそられながら、桜子に先を促す僕と香澄。
すると、桜子は思ってもみない言葉を口にした。
「私ね、桜のお花見とは別に、桜以外のお花見もしてみたいのよ!」
――桜以外のお花見?
寧ろ、『お花見と言えば桜しかない』だろう。
それくらい、『お花見=桜』と常識の様に思い込んでいた僕にとって、桜子のセリフは大きな衝撃を与えた。
(桜以外のお花見って……一体、どういう事なんだ?)
果たして、桜以外でお花見なんてあったか?
すると、香澄の膝に座っている桜子が、両足をぷらぷらさせながら、先程の言葉の続きを話し出す。
「私ね?生まれてからずっと、上野の桜並木にいたの。だから、桜以外の花を見た事が無いのよ。それでね、どうせ外に出るなら……桜以外の花も見てみたいって思ったの!お願い!私に、見た事も無いお花を見せて!」
大きな瞳を輝かせ、僕達にそう無邪気にお願いしてくる桜子。
僕と香澄は、桜子の予想外の申し出に顔を見合わせてしまった。
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