57人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の夜。
桜子を寝かしつけた後、僕と香澄はリビングで、桜子の2つのお願いに関して話し合いをした。
「お花見をしたい、ってお願いは直ぐにでも叶えてあげられるんだけど……桜以外のお花を見たいっていうのが難しいよね」
「うん」
香澄の言葉に深く頷く僕。
そう、桜子がしてきた2つのお願い――その2つ目の方が、僕達にとっては大きな問題だった。
“桜以外のお花見もしてみたい”
その言葉に忠実であるならば、同時期に咲いている花を、何でもいいから桜子に見せてやれば一応はクリアとなるだろう。
しかし、桜子はこうも言っていた。
“私ね?生まれてからずっと、上野の桜並木にいたの。だから、桜以外の花を見た事が無いのよ”
と。
で、あるならば――。
「どうせ生まれて初めて見るなら、珍しくて、他じゃあまり見られない花の方がいいよね」
まるで、僕の意思を汲んだかの様に、僕が考えていた事と全く同じことを口にする香澄。
僕も、賛同の意を示す様に、彼女の言葉に大きく頷いてみせた。
そうして、桜子に初めて見せるならどんな花が良いのか――僕達は、自宅にあるPCやタブレットを駆使して、早速リサーチを開始する。
リサーチ開始から数時間後。
「「あっ!!」」
同時に声を上げる僕と香澄。
そして僕達は、やはりほぼ同時に、互いのPCとタブレットの画面を見せ合った。
そこには、“ある場所に『とある珍しい花』の花畑があり、そこが近々満開になる”という――全く同じ記事のページが開かれていたのだ。
「これなら、桜子ちゃんにも良い思い出になるかも!」
「うん、きっと!」
僕達は、早速その場所について詳しく調べると、チケットを手配した。
最初のコメントを投稿しよう!