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「あ、ちゃんと来てるじゃん」
「優希、おかえり。それ持って来て」
「おぅ」
戻ってきた彼が言葉を発した途端、その方向に女の子たちの視線が一気に集まり、更に彼の視線が私に向くとその大勢の視線が私に向かって突き刺さりなんだか恐怖を感じた…
彼がカウンターに入ると、私への視線も自然と解けて少しほっとしたが、これは何か凄いとこに来ちゃったのかもと…
やっぱり冒険なんてするもんじゃなかったとぼぉっと考えてると、関西弁の彼にめちゃめちゃ至近距離で見つめられていた。
「ねね、お名前~」
「あっ、萌果…です////」
「めっちゃ可愛いやん♡萌果かぁ!よろしくなぁ」
「あすか、馴れ馴れしすぎ」
「蓮くん、いちいちうるさいねん。別にええやん、なぁ?」
明るくて賑やかなあすかくんと、クールで紳士的な蓮くん。
二人の掛け合いが面白くてついつい笑ってしまっていた。
「ふふっ」
「あ、やっと笑ったね」
「笑わせたの俺やで~」
「あすか、調子乗るなよ」
「お二人めっちゃ仲良しですね」
「せやねん、俺ら付き合ってんねん。内緒やでっ…」
「えっ!?」
突然のカミングアウトに私の胸は高鳴った…
何故なら私は少し腐女子の性質を持ち合わせており、とってもいいカップルだと本気で思ってしまったからだ。
「おい、あすかぁ。萌果ちゃん普通にどん引きしてんじゃん…冗談だからね?」
「あ…冗談…かぁ」
「俺は本気やけどなぁ♡」
「あすかの言う事気にしなくていいから。俺は蓮、よろしくね。じゃあ乾杯しようか萌果ちゃん」
「はいっ」
「では!俺たちの出会いに~」
「かんぱーい!!」
あぁ…引いたんじゃなくて期待に胸が高まってドキッとしたなんて言えなくて、付き合ってないと分かり少し残念な気持ちになりながら、いつもとは違う甘~い飲み物に少し酔いそうになる。
すると奥のキッチンから二人の話し声が聞こえてきて、何かあったのかと覗き込んでみると、シェフさんがちょっと困った顔をして袋の中を覗いていた。
「…あれ?優希、これ…」
「ん?なに?」
「この豚肉…」
「うん、豚肉だろ?」
何やら揉めてる二人に蓮くんがすかさず声をかける。
「優希くんまたやっちゃったの?」
「は?だって豚肉だろ?」
ちょっと不機嫌に怒り気味の彼を他所に、あすかくんが我先にと袋の中を覗きに行く。
「ゆっきーこれバラ肉やん、ミートソース作るんやったら挽き肉やで?」
「え?そぉなの?まじで??」
「まぁ…細かくすれば良いっちゃ良いけど。うーん、よし!じゃぁちょっとアレンジしてみようか」
「おぅ!さすが雅兄や~」
「えぇ〜、ちゃんと買ってこれたと思ってのにぃ…」
「大丈夫だよ、すぐ作るから待ってて」
しょぼんとする彼の肩をポンポンとすると、シェフさんはもう何か思いついたのかすぐに調理に取りかかった。
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