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偶然の出会い
あれから数日経っても優希からは何の連絡もないし、蓮くんからはすぐに連絡しなかった事を怒られ、何だか気まずくて暫くバーにも行っていない。
だけど、今日は蓮くんから話がしたいからBARに来てくれと呼び出されていて、仕方なくBARに向かっている。
優希はいないからと言われたものの、まだみんなに対する気まずさだってあるから、どんな顔してお邪魔したらいいのか…
そして、そんな事をぼんやり考えながら、コンビニに立ち寄った時の事だった。
入り口でギターらしきものを担いだ男の子とすれ違いざまにぶつかって、私が持っていた携帯が地面に落ちた。
「あっ、ごめんなさい、ぼーっとしてて…」
「こっちこそごめんね、大丈夫だった?」
落とした私の携帯を拾いながら、もの凄く申しわけなさそうに謝ってくるその人は、女の子みたいに目がクリクリで髪がフワフワで可愛い男の子だった。
「うん」
「携帯…壊れてない?」
「あ、うん。大丈夫みたい」
「あぁよかったぁ!ん?あれ?これ…」
彼は、私の携帯に付いてるキーホルダーを見て、目をキラキラ輝かせた。
「このキーホルダー…」
「知ってるの?」
「うん!おれこのバンド大好きなんだぁ!」
「え?ほんと??あたしも好きなのっ!」
この子まさかバンドマン!?
最近は昼の仕事と夜の仕事で忙しかったからなかなかライブに行けてなかったけど、何を隠そう私は生粋のバンギャだ。
ギターを担いだ男の子なんて、好み中の好み!
「DVD買った?」
「うん、買った!」
「おぉ!俺このライブ行ったんだよぉ!」
「え?嘘っ!私も行ったよ!」
「え?まじで!?どこら辺にいた!?」
「あの時は結構番号良くて…」
私たちは初対面とは思えないほど意気投合ししすぎて、周りの人が引くほど盛り上がってしまった…
「あ…すいません、つい…」
「いえいえ、こちらこそ…そうだ、名前…聞いても良いかな?」
「あ、うん。萌果です」
「俺、桃太!よろしくね!」
「桃…ってあの桃太郎の?」
「そう!みんな桃ちゃんって呼んでる」
「へぇ、可愛いっ」
「でしょ?」
この子テンション高いしメッチャ明るいし、何だかすごく一緒にいて楽しいし、更には趣味が合うなんて運命的なものを感じた。
「ねぇ、今から友達んとこ飲みに行くんだけど一緒に行かない?」
「え?あ、でも私これから用事があって…」
「えー残念~。もっとお話ししたかったなぁ…あ、そうだ!今度俺らのライブにおいでよ!」
「ライブ!?バンドマンなの?」
「うん!えっと…」
やっぱりバンドマンだ…
ギターかベースか、はたまたボーカルか…
久しぶりの熱い出来事に、私の脳内は期待でいっぱいになった。
そして一枚のフライヤーを手渡された私は、そこに写っている真ん中の彼と目の前の彼が同一人物だと確認すると物凄くテンションが上がった。
「これ、今度のライブ!良かったら来て!」
「うん!」
「じゃあね、待ってるからね!バイバーイ!」
そう言って桃ちゃんは元気良く手を振って去っていった。
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