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「せやけどゆっきーの初めてのおつかいはいつ成功するんやろな?」
「さすがだよな、優希くんは期待を裏切らない」
「あ゛ーーーもぉお前らうるさい!!」
「ふふっ♡これでもここのマスターなんやで?可愛いやろ?」
「マスター?」
この可愛いイケメンさんがこのお店のマスター!?
マスターって言ったら何かイメージ的にそこそこ歳のいった渋いおじさまを想像するから、物凄いギャップに脳が追いつかない。
「あすか、お前今月減給な」
「えーっ!いややぁー!!」
あすかくんの叫び声が響き渡ると同時に、キッチンからいい匂いが漂よってきた。
「お待たせ、まかないだけど萌果ちゃんも良かったら食べて」
「あ、ありがとうございます」
「お?ナポリタン?」
蓮くんが不思議そうにお皿を覗き込むから、私もよくよく見てみると、確かにそれはミートソースではなく、ナポリタンのようだった。
「うん、ナポリタンにしてみたよ。ウインナーの代わりに豚肉をそのまま入れたんだけどどうかな?」
「うわっ!!これうまっっ!!」
子供のように目を丸くしてナポリタンを頬張るマスターの彼は、本当に可愛い…
しかし、随分とオーバーリアクションだなと思いながらも、一口食べてみれば本当に美味しくて、思わず同じリアクションになってしまった。
「うわっ!ほんとだ!うまっ!」
「萌果ちゃんまで…」
蓮くんのリアクションが若干引いてたように感じたけど、もうこの際終電も逃した事だし親に怒られるのは仕方ないとして、今日は今日で楽しんでしまおうと心に決めた。
「え?萌果ちゃんて?何でみんな名前知ってんの?」
「またまたぁ。ゆっきーすっとぼけすぎやろ、さっき自己紹介したやん」
「いや、優希くんさっきいなかったから…」
「そういや俺もまだ自己紹介してなかったね、雅希です。よろしくね」
冷静な蓮くんの横からシェフさんが自己紹介をしてくれた。
雅希…だから雅兄か。
あすかくんのお兄さん…なのかな?
「ほら、ゆっきーも自己紹介しいや」
「お、おう。優希…です。よろしく…/// 」
さっき道で声掛けてきた時と全然違くて、また顔を真っ赤にして上目使いでこちらを見てくるから、思わずこっちも照れてしまう。
なんかやっぱりギャップ凄いし、可愛い人だな…
「あぁ?優希くん照れてんの?」
「もぅ、恥ずかしがり屋さんなんやからぁ♡」
「もぉっ!うるさいなぁ/////」
「ふふ、本当うるさい店だけど、ゆっくりしてってね」
雅希さんはみんなよりちょっとだけ大人っぽい雰囲気で、優しそうな人だ。
優希くん…は本気で照れてるのか怒ってるのか、ちょっとわからないけどみんな笑ってるし大丈夫…かな?
このお店の男の子達はみんなとても優しくて、終電を逃してしまって後々色々と面倒臭い事になると考えると怠いけど、この時間は本当に楽しくてそんな事忘れるくらいめちゃくちゃ盛り上がって、結局朝まで飲み明かしてしまった。
監視の厳しい親から逃れるために、お金を貯めてあの家を出ようと、半ば強引にこの歓楽街で働き始めてから、特別楽しいことなんてなかったけど、今日は本当に楽しかった。
終電間際に私を引っ掛けてくれたあすかくんに感謝しなきゃ!
月に一回でもいい、このお店のみんなに会いたい。
また、遊びに来てもいいかな?
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