この気持ちはなんだろう

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この気持ちはなんだろう

今日も仕事終わりに今週の疲れを癒すためにあの店に立ち寄る。 あれから1ヶ月くらい経って、親には残業で帰れない時もあると適当に嘘をついているが、いつバレてもおかしくない状況ではある。 半ば強引に誘われたのがきっかけだったけど、どうせ家に帰っても自分の居場所はないし、週末はここに来るのが唯一の楽しみになってたから、バレたらバレたでその時はどうにでもなれだ! 「いらっしゃい、萌果ちゃん」 「あれ?今日は蓮くんだけ?」 「あぁ、もうすぐあすかも来ると思うよ。あいつまたナンパしてるかもねぇ」 「そういや私も最初あすかに声かけられたんだっけな」 「そうだったよね。あれからもう一ヶ月くらい経った?」 「うーん、そぉかもね~」 「はい、いつものハイボール」 「あざーす」 蓮くんは私の前にグラスを置くと、目線を合わせて座ってくれた。 今日はあんまお客さんいないなぁと思いながら辺りを見回し視線を戻すと、蓮くんは組んだ腕をカウンターの上に置いて、その上に顎を乗っけて上目使いでこっちを見ていて、その整った顔立ちと妖艶さにちょっとドキッとした…  「そういや最初カシオレ飲んでたよね?まさかの酒豪とはね~」 「や、これは、その…」 「俺、飲める人嫌いじゃないよ?」 「本当??酔っぱらいすぎて引いてない??」 「全然、むしろそんな萌果ちゃんが好き」 「ちょっ、からかわないでよ///」 あの時カシオレなんて頼んで思わず女子を出してしまった自分と、今目の前にいる蓮くんの顔が近すぎて余計に恥ずかしくなる。 女の子を百発百中で落としてそうなその視線でそれは卑怯だ… 絶対からかわれてると確信して慌てて話題を変えた。 「あ、そう言えば優希さんは?」 「あ~週末は忙しいからね~」 「そぉ…なんだ…」 「気になる?」 「えっ、いや…そーゆーわけじゃないけど…」 普段は知らないけど、私が来る週末は夜中にひょっこり現れることが多くて、それもお客さんと一緒だったり一人だったりと様々だが、今日も遅いのかなぁなんてぼんやり考えていた…。 すると、買い物袋を沢山両手に下げたあすかくんが元気いっぱいに出勤してきた。 「おはようさ~ん。お!萌果、来とったん?」 「あすか遅かったな。またナンパしてたのか?」 「してへんよぉ、蓮くんちょっと手伝ってぇ?萌果ごめんなぁ」 「はいはい。萌果ちゃんゆっくりしててね」 「はーい」 暇になってぼんやり辺りを見回すと、お酒のボトルが並ぶ棚に二人の子供が映った写真が見える。 え?もしかして誰かの子供?まさか子持ち? 「…ねぇ、その写真」 「ん?あ、それは…ごめんね、ちょっとまって…」 言い掛けたところでちょうど電話が鳴り、蓮くんは電話対応、そしてあすかくんはキッチンの方でずっと作業をしている。 はて、一体この二人の子供は誰の子なんだろう… 年齢的には五.六歳くらい…かな? 雅希さんなら…有り得そうな気もするけど。 写真を見ながらハイボールを一口飲んだところでちょうど店の扉が開くと、テンション高めの女の子の声が響きわたった。 「こんばんわぁ~」 「あ、いらっしゃい!ちょっと待っとって~、今手が放せんのよ」 「あ~大丈夫大丈夫~。優希ぃ、こっちでいいよね?」 その名前に反応してちらっとドアの方に視線を移せば、優希さんとバッチリ目があった。 「あ…来てたんだ」 「うん」 「優希ぃ、早くこっち~」 「あぁ」 二人はソファーのある後ろの席に隣り合わせで座り、私がそれを見てため息をつくと、電話を終えた蓮くんが声をかけてくれた。 「また暗い顔してる」 「…そんなことないって!ほらっお酒作って!」 「はーい…。あ、あすかレモンは??」 「あかん!忘れたわぁ」 「ふーん、そっか。じゃあ俺買いに行ってくるわ」 え、ちょっとまって! 今、蓮くんに居なくなられたらめちゃくちゃ気まずいじゃん! そう思った私を見ながら蓮くんは、やっぱりね…みたいな顔をしてて、慌てて表情を繕ってみてももう遅くて、蓮くんはニヤニヤしながら私を見て「一緒に行く?」 と小声で声をかけてくれた。 無言でうなずいた私を見て蓮くんはまたからかうようにニヤっと笑うと、何故かそれを優希さんに報告し始めた。 「優希くん、買い出し行くんで萌果ちゃん連れて行きますね」 「えっ?」 ちょっと不満そうに眉間に皺を寄せた優希さんと一瞬目があったけど、何となくスッとそらすとそのまま蓮くんと二人で外に出た。 何事もなかったかのように私の前を歩く蓮くんは、本当に背が高くてカッコイイ… そして、置いていかれないように着いてく背中に声をかけた。 「…ねぇ、蓮くん。何で誘ってくれたの?」 「ん?だってさ、あんな所に取り残されたくなかったでしょ?それと俺が連れ出したかったから?ただそれだけ…」 取り残されたくなかったのは間違いなくその通りで… でも連れ出したからったから…なんて。 蓮くんは完全に私をからかって反応を見て楽しんでるんだとわかっていても、こんなイケメンに言われたらドキドキしちゃって顔も見れない。 年下の男の子にこんなにも惑わされるなんて… そんな事を考えながらぼぉっと歩いてたら、蓮くんが急に私の肩を掴んで引き寄せるからビックリして思わず蓮くんを見上げた。 「車、危ないから内側歩いて」 「あ、ありがとう…///」 そう言って私をさりげなく道路の内側に寄せると、そっぽを向いた蓮くんの手がポンポンと私の頭に触れた…
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