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 ――― 「いや、何かの間違いだろ」  寺島貴也にフォローバックされたと加賀美に報告したら、冷たくあしらわれた。 「ほんまじゃが! 見ね!」  ずっとスマホに目を落としていた加賀美は疑いの眼差しで俺のスマホの画面を覗いた。確かに寺島貴也からフォローされていることを確認すると、唇を不満そうに尖らせて「お前と同じで指が滑ったんだろ」と認めようとしない。 「徹のプロフィール欄、がっつり大学名書いてんじゃん。同じ大学って分かったからフォロバされただけなんじゃないの?」  それはあるかもしれない。現に俺のアカウントは興味を持ってもらえるような投稿などほとんどしていない。というか、登録したての時に一件だけアップしただけで、それ以降は使っていない。フォローされる理由があるとすれば大学という共通点だけだ。 「なんだよ~、俺だってフォローしてんのに、俺はフォロバされてないぜ。なんで徹だけなんだよ」  加賀美の機嫌が悪い原因は、自分は寺島貴也にフォローされなかったのに、俺がされたことにあるらしい。 「プロフィールに大学名書いてみたらええが」 「んな個人情報、普通は載せないぞ。載せるなら鍵かけるよ。これだから初心者は……。お前も気を付けろよ」  講師にマイクで私語を慎むように注意を受けた。俺は体が大きいので特に目立ってしまう。講義室中の視線を集めて肩を竦めた。加賀美が小声で懲りずに話し掛けてくる。
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