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 可愛いものが好きだ。  小さい頃から二人の姉のおもちゃにされてフリフリのワンピースを着せられたり、リボンを着けられたりと遊ばれていたせいか、ピンクの服を着ることにもぬいぐるみを持つことにもなんの抵抗もなかった。  俺は小学校中学年くらいまで小柄で中性的な顔立ちをしていたから、妙に似合ってしまっていたのもある。姉たちからは長いあいだ妹のように可愛がられたものだ。  フォトジェニックなお菓子、ふわふわのぬいぐるみ、キラキラしたアクセサリー。見ているだけで楽しくて明るい気分になれるような、そんな可愛くて綺麗なものに囲まれて俺は育った。特に犬グッズ。ポメラニアンを飼っていたからか、犬のぬいぐるみや犬モチーフのキャラクターに目がない。夜寝る時に抱えている大きなポメラニアンのぬいぐるみは今でも俺の相棒だ。  中学に入って急激に背が伸びて体つきも逞しくなると、思春期もあって姉たちから遊ばれることはなくなった。野球部に入って休日は部活の練習か、友達と釣りに出掛けるという泥臭い毎日を送るようになる。だけど可愛いものは好き、というのは中学を卒業しても高校生になってもずっと変わらなかった。鞄にいつも付けているのはポメラニアンのマスコットキーホルダー、スマホのホーム画面もポメラニアンの推しキャラ。  友達からは「お前、そんな趣味なの?」と苦笑いされ、女子からも冷ややかな目で見られることが多かった。母親と姉すらもガタイの良い見た目に似合わず可愛いものを持っている俺を気味悪がったものだ。そもそも俺がこんな趣味になったのは姉のせいだというのに。  女物が好きなの? 女の子になりたいの? なんて的外れな質問をされることもしばしばだが、俺は別に自分が女の子になりたいわけでも、男子たちとのカードゲームやバトルゲームが嫌いなわけでもないし、売られた喧嘩を買うくらいの度胸もある。  ただ可愛いものが好きで、可愛いものを愛でたい。それだけなのだ。  
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