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昼休みに入り、混雑する前に友達の加賀美と学食に駆け込んだ。人気のから揚げ定食を無事注文して席につき、さあ食おうと大口を開けたところで加賀美が思い出したというよりタイミングを見計らっていたかのように言った。
「加藤さん、ごめんね、だって」
俺は口の中に入れたばかりのから揚げを九割飲み込んでから、答えた。
「えっ、ライン教えてって頼んだやつ? まじで? 俺、フラれたん?」
加賀美は味噌汁をすすりながら、同情するでも気まずそうにするでもなく、さも当然といた様子で頷いた。
加藤さんとは、俺と同じ学部で同じクラスの女の子のことだ。大学に入ってすぐ、クラスメイトと開いた親睦会で知り合った。ふんわりした白シャツが似合う、亜麻色の髪の清楚系美人だ。雰囲気も笑顔も可愛い加藤さんに、俺はひと目惚れした。本来なら自分からアクションを起こさねばならないのだろうけど、声を掛けるタイミングが分からなくてチャンスを逃した。だから連絡先を教えて欲しい、というのを加賀美伝手にお願いしたのだ。その答えが、さっきの報告というわけだ。
「俺の何がいけんのじゃろ」
「は!? 分かんねーの!?」
加賀美は両目をこれでもかというほど見開いて、ご飯粒を口から飛ばしながら叫んだ。そして箸で俺を指す。
「それだよ、その服!」
「服?」
「くたびれた感満載のデニム! 膝の色褪せ具合が貧乏くさい!」
「そうか?」
「何より、なんなの、そのTシャツ! 犬のキャラもんとか! それ、お前に似合わねーから!」
指摘された自分の全身を改めて見る。確かにデニムは気古したものだから貧乏くさいかもしれない。でもTシャツは最近買った俺のお気に入りだ。
「可愛ええじゃろうが」
「可愛いよ! 可愛いけどお前には似合わない! せめてワンポイントにしろよ! なんでよりによって全面大画面で主張してんだよ!」
「これがええんじゃろ!」
「自分の姿を見ろ!」
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