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 加賀美がすぐ横の窓ガラスを指差すので、その先を追った。椅子から立ち上がってガラスに映る自分の姿を眺める。長年野球部で鍛えられた筋骨逞しい両腕と広い肩幅。胸板が厚いのでTシャツはピチッとしている。でもそのピチッ、のおかげで可愛いイラストが目立って良い。筋肉のせいでどうしても太くなりがちな足はダボっとしたデニムで隠す。まあ、膝は言われてみれば色褪せているが、そういうデザインだと思えば悪くない。何が駄目なのか分からない。しいて言えば顔か? 二重の目に太い眉。日焼けした黒い肌のせいもあってソース顔だと言われる。でも、だからこそ髪は清潔感を保てるように短くしているのに。 「……何がいけんの?」  ハァーーーーー、と盛大に溜息をついて、加賀美は項垂れた。 「そうか、分かった。お前は壊滅的にセンスが悪い」  食堂中の注目を浴びていて、後ろの席の人に「邪魔」と言われてしまったので、おとなしく座った。 「センス悪いか? 俺」 「まずそんなTシャツ買わないよね、普通」 「俺は即決で買うたけどな」 「OK、俺が悪かった。そうだ、それを買うのはお前くらいだ」  加賀美がテーブルに身を乗り出して顔を近付けるので、俺も同じように顔を寄せた。 「あのな、お前が何を好きだろうと俺は別にかまわないと思うよ。でもやっぱりキャラもんの服はこう……子どもっぽいとか、あるじゃん? 百歩譲って可愛い女の子が着てるなら許せる。あと、ウケ狙いとかさ。でもガチで着てたらちょっとホラ、ね? センスを疑われるわけよ」 「疑われとんか」 「そうだ、お前はダサい」 「ダサ……」 「女の子も、彼氏として連れて歩くならセンスのいいカッコいい男連れたいんじゃない? 特に加藤さんはオシャレ清楚系美人だし。あの子の隣にお前ってのはちょっと……」 「えっ、じゃあ、加藤さんは俺とおるんが恥ずかしいけぇ?」 「そうだと思うよ、俺は」  加藤さんに連絡先すら交換させてもらえないのは、俺がダサいから。俺と一緒に歩きたくないから。俺を彼氏にしたくないから。加賀美にはっきり言われて、俺はまたしても愕然とした。
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