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「……そうだよな。好きなものをやめろって言われたら、辛いよな。俺が間違ってた。ごめん」  加賀美は思ったことをズバズバ言うし言葉が刺々しいこともあるけれど、言えばこうして素直に謝ってくれる。だから俺は加賀美とはすぐ友達になれたのだ。一番身近な友達が分かってくれたなら、それでいい。 「でも、お前がダサイのは変わらないからな」 「あら」 「キャラもん着たいのは分かった。ようは合わせ方だ。それが分かればマシになると思う」 「どうやって選ぶん」 「雑誌とか、SNSのファッション系アカウント参考にするとか」  雑誌もSNSも見たことはある。ファッション系アカウントを探したことも。けれどもイマイチどれもピンとこない。オシャレなんだろうけど真似をしたいとか、こんな風になりたいとか考えたことがなかった。ちなみに加賀美はカジュアル系の今時のイケメンだ。何を着てもサマになっているし、マッシュルームカットも似合っている。  確かに、ダサイ奴よりオシャレな奴を連れて歩きたいと思うのは当然かもしれない。素の自分を好きになって欲しいのは前提だが、自分も相手に寄り添う努力は必要だよな、と改めた。 「よっしゃ分かった。加賀美、俺のファッションセンス磨いてくれ」 「いや、ごめん。俺、お前を磨ける自信ない。自分と似た体型とか同じ趣味の人ならまだしも、お前の体型ゴリラだもん」 「そこをなんとか!」 「知るか、自分で研究しろ! あっ、ホラ! 予鈴鳴っちゃったじゃんか!」  食後のカフェオレを買う暇もなくチャイムが鳴り、慌てて席を立つとちょうど目の前にいた人と軽くぶつかってしまった。
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