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それにしても、すごくセンスがいい。シャツもTシャツもボトムスも、ほぼモノクロでどこにでもあるようなシンプルな服なのに体型に見合った着方をしているので、どれもよく似合っていたし、統一感がある。
「かっこええな!」
「なー!? センスいいだろ!?」
「でも身バレしとんじゃろ、大丈夫なんか」
「いや、身バレっていうか、一部でのそういう噂。本人もそれについて何も発信してないし、毎日アップしてるから大丈夫なんじゃない?」
もっとよく見たかったのに、加賀美は早々にスマホをポケットに押し込んだ。
今までどんな雑誌を見ても、どんな有名なアカウントを見てもコレ、と思うものがなかったのに、さっきの人の投稿はどれもすごくセンスがよかったし、実際オーラがあった。素直にカッコいいと思ったのは初めてかもしれない。
「――決めた。俺、あの人に弟子入りするわ」
「はあ~!? なんなの弟子入りって」
「あの人に俺のセンス磨いてもらう」
加賀美は目も鼻も口も開け放してポカンとしたが、すぐに吹きだして馬鹿にしたように大笑いした。
「ムリムリ! インフルエンサーだもん、そんなやすやすと近付けねぇから!」
「そんなん分からんじゃろ!」
「あのさ~、気持ちは分かるけど手あたり次第にお願いすりゃいいってもんじゃねぇのよ? 仮に弟子入りできたとしてよ、いくら寺島さんでもお前のセンスを磨くなんてできないと思うわ」
「俺はそんなに駄目なんか」
「うーん、とりあずさ、方言直してみれば? どこだっけ、その訛り。四国?」
「中国」
「まあ、俺は好きだけどね。そのゆるい喋り方」
そう言って加賀美は一人足早に講義室へ向かった。適当に流されてしまったが、あの寺島って人ならなんとかしてくれるのではないだろうかと、俺はけっこう本気で考えた。
だってあの人、ポメポメポリン可愛いって言ってたし。
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