春と桜

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春と桜

はらはらとピンク色の五月雨 降り積もる 桜のはなびら 一つ一つの花弁が踊り狂う様に ひらひらと舞う この季節に毎年お決まりみたいに 綺麗に咲く桜の下で 二人きりのお花見を楽しむ二つの影 一人は 若い男で 一人は若い女だった。 「毎年思う事だが今年も綺麗だなあ  桜...」と呟いた男は手に持っていた 盃をくいっと呷る。 その呟きに応える様に若い女が お辞儀をして答える。 「ありがとうございます。  春様」女は徳利を持ち上げ 男の盃に酒を注ぐ 二人は無言で静かに笑みを浮かべながら 桜の雨嵐を見ていた。 ふと男が空中を見上げると桜のはなびらが ひとひら男の手元に舞い落ちる 男はそれを破れない様にそっと 掬うと.... 女の長い桜色の髪の毛を 一房取り 掬った桜の花びらを 女の一房の髪の毛に当てた。 「桜.... こうしてお前と静かに 過ごせるのも あと一ヶ月 次に会えるのは また来年だ....」 すると男は手に持っていた女の 髪の毛の一房に桜の花びらを当てた所へ 唇を落とした。 「はい 分かっています春様 また来年 会える日を楽しみに  お待ち申し上げております。」 そうして二人は、静かに抱き合った。 たった3ヶ月の逢瀬 また来年 男が春を呼び寄せると 決まって 春の下に桜は咲く 春を求める様に女は桜を咲かせる そうしてまた二人で静かなお花見を 楽しむのだ....。
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