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「明田山くん、一緒に来るかい? いつも通り、非公式のアドバイザーとして」
電話を切った奈土力警部は、目の前の友人に声をかける。
テーブルの向かい側に座っているのは、よれよれのワイシャツを着て、顎には無精髭も目立つ冴えない男だった。
現場まで連れて行けば「私は明田山智助と申しまして、探偵みたいなものです」と怪しげな自己紹介を口にして、関係者たちから胡散臭い目で見られることも多いのだが……。
素晴らしい推理を披露して事件を解決に導く、優秀な人物でもあった。
「非番だった警部が、わざわざ呼ばれるということは……。難事件ですかな?」
「いや『難事件』かどうかは、まだわからないが……」
わずかに苦笑いしながらも、奈土力警部の目は鋭く光っていた。
「……殺人事件なのは確かだよ。それに、君好みの事件だろうね。現場には、ダイイングメッセージが残されていたそうだから」
その言葉は、明田山探偵の気持ちを煽るには十分だったのだろう。まだ腰を下ろしたままの奈土力警部より先に、彼は椅子から立ち上がるのだった。
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