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他愛もない話をしながら弁当を食べ、おやつを分け合った。程よく腹も膨れたところで、亮太がフリスビーを取り出した。
「これやろう!」
僕たちは広がり、1つのフリスビーを追いかけた。
風はあまり強くなかったので、フリスビーは割と真っ直ぐに飛んでくれたが、手元が狂うとなかなか上手くはいかない。それでも、僕たちは飛んではしゃいで、その時を目いっぱい楽しんだ。
身体を動かし、買ってきたおやつをほぼ食べ終わったところで、僕たちは頂上を後にした。
上りと違って、下りは早かった。スピードを緩めることなく、僕たちは坂を駆け下りた。
夕刻前に駅にたどり着き、僕らは券売機の前に進んだ。ところが、1人だけその場に立ち止まり動かない者がいた。
誠司だった。今にも泣きそうな顔をして、ポケットやリュックをあさっている。
嫌な予感がした。正人が誠司に駆け寄り、どうしたのか尋ねた。
「財布が……ない」
誠司はここぞという時にドジを踏むことが多々あった。
そのことを忘れていた。
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