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空を覆うドス黒く分厚い黯雲。繰り返し鳴り響き、雲を駆け巡る怒りの権化のような轟音と稲光。そしてそれらを背景とし堂々たる面持ちで聳え立つ魔王城。
その魔王の間――王座にはこの世界を我が物にせんと企む魔王ヌバラディール・ペペが頬杖を突きながら深く腰掛けていた。恐怖の化身のようなその姿は禍々しく魔王という名に恥じぬ程に恐ろしい。
そんなぺぺの前へ慌てた様子の手下魔族が跪く。
「ヌバラディール様! 大変でございます!」
背に付けたマントと二本の角、片眼鏡の知的な魔族は顔を下げたままやはり慌てた少し大き目の声をを出した。
「どうした?」
だがそんな魔族に対してぺぺの地を揺らすような声に心の乱れは無く、悠々としている。
そしてゆっくりと顔を上げた魔族は言いずらそうに報告を続けた。
「実は勇者のことなのですが……」
「ついにやってきたか」
既に勝利を確信した笑みを浮かべ、小さく笑うペペに見えている結末はたった一つだった。
「いえ、勇者一行は現在バルラッド王国にいます」
「近いな。ならばここへ来るのも時間の問題か」
勇者はこの世界最後の希望。その勇者を倒すということは、もはや世界を征服したと言っても過言ではない。
そしてその時がすぐそこまで近づいていることに、ペペは不気味な笑みを浮かべた。
だが、魔族はそんなペペが予想だにしないような言葉を続けた。
「……恐らく勇者はここへは来ないかと」
先までの笑みは一瞬にして消え去り、ペペは眉を顰めた。
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