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魔王城の裏庭にはゾンビ花の花壇があった。ペペが趣味で育てている花で彼の故郷から持ってきたもの。
そんな花壇前にペペの姿はあった。体育座りで小さくまとまったペペは元気な呻き声を上げる花の中心に咲いたゾンビをただじっと眺めていた。
すると辺りから響く呻き声に紛れるように聞こえた足音。それはぺぺの隣まで近づき、そして立ち止まった。
「お隣に座ってもよろしいでしょうか?」
撫でるような優しい声はそっと尋ねてきた。顔を上げてみるとそこには少し前屈みで最初と同じ微笑みを浮かべるアルバニア。
「いいよ」
「失礼します」
アルバニアはしっかり頭を下げてから隣に腰を下ろした。
「元気なゾンビ花ですね。ペペ様がお育てになられているんですか?」
「そう」
「ゾンビ花は繊細ですからね。この数をここまで育てられるとは流石です。それにこの鳴き声……」
改めて耳を澄ましアルバニアは呻き声を聞いた。
「質の良いゾンビ花ですね」
「いい感じに育ってるんだよね」
「素敵です」
それから少しの間、二人は何も言わず呻き声を上げるゾンビ花を眺めていた。
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