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 それから魔王の間を出るとその足で魔王城内を歩いて回り、まだ信じ切れていないベルゼールの言葉を確かめる。心ではあれは嘘で城内にはいつも通り手下の魔族や魔物達がいることを願っていたが、ベルゼールの言葉には嘘偽りはなく――魔王城には魔物一匹いなかった。  ペペの足音だけが響く城内の静けさは不気味というよりは少し前まであったお店がいつの間にか無くなっているようなそんな寂しさがあり、とてもこの世界を征服しようとしている魔王の城とは思えぬもの。  そんな誰も居ない城内を一通り歩いたペペはそのまま自室へ。ドアを雑に開けると真っすぐベッドに行き、腰を下ろして流れるように頭を抱える。 「どゆこと? えっ? 魔王が手下に裏切られるなんて事ある? 聞いたことないんだけど?」  未だに嘘か夢である可能性をどこか捨て切れないぺぺ。 「しかも勇者の極悪非道さってなに!? 勇者って極悪非道とは対極にいるタイプでしょ。しかも国盗りって……。勇者なんだからみんな協力するでしょ。征服する必要なくない?」  考えれば考える程、思考は混乱の沼へと呑み込まれていった。 「はぁー。――とりあえずその勇者とやらを見に行ってみるか」  大きな溜息を一つ零すと、イメージとはかけ離れたその勇者を一目見てみようと立ち上がるペペ。  すると彼の足元には黒紫色の魔力で作られた円が現れた。周りが光り中心に向け薄く渦を巻いていたそれは出現後にペペを包み込む光を放つ。
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