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8
柱のような光が消えると足元の円形も消えペペはゆっくりと目を開いた。そして魔王城の自室へ帰ってきた彼は倒れるようにベッドに座り込む。
「あぁ~。あいつやべー奴だ。あんなのが勇者とか聞いたことないし習ってないし。こういう時ってどうすればいいの? マニュアルに載ってたっけ?」
ペペはそう言うとベッドの下から広辞苑のように分厚い本を取り出した。タイトルは『新米魔王による初めての世界征服』。
それを膝の上に乗せると目次を開き勇者の種類の項目を開く。目的の内容だけを探しざっと目を通していくがどこにも目的の事は記載されていない。他にも特殊な前例などのいくつかの項目を見ていくがペペの期待していた内容はどこにも書かれていなかった。
仕方なく深い溜息をつきながらマニュアルを閉じたペペはそれをベッドの下に仕舞いそのまま寝転がる。
「魔族だけじゃなくて魔物も全員いなくなったし。勇者は僕に興味無いし。――どうしよう。これどうやったらこの世界取れる? さすがに勇者と魔族と魔物と人間を一人で相手にするのは無理だしなぁ」
少し天井を見つめながら真剣にどうすればいいかを考えてみたが、シミひとつないその天井のように何一つ解決策は浮かばなかった。
「折角、下積みを積んでやっと魔王として選ばれたのに……。こんな風に終わりたくないなぁ」
また自然と零れる溜息は相変わらず深い。
「父さんにどうしたらいいか訊く? いやダメだ。怒られそう……。ならじぃちゃん? んー。――いや、ばあちゃんだな。こういう時にこっそり頼れるのはばあちゃんしかいない」
起き上がったペペは手の平に魔力の塊を溜めるとそれを一気に握り潰した。粒子のように小さくなった魔力は握った手の隙間から外に溢れ出しペペの眼前にモニターのような長方形を作り出した。
すると真っ黒な画面の中央に受話器のマークが現れ震えながら電波を発信し始める。数コール分震えると真っ暗だった画面が一変。立派な角を生やし皺くちゃだが柔和な表情をしたペペの祖母が映し出された。
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