入院前夜

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入院前夜

「なつみ……」  先に床に就いていた永子が、寝言を言った。  寝室のサイドテーブルに持ち込んだパソコンで、永子の病気についてあてもなく検索していた恭一がふり向くと、永子の寝顔は嬉しそうに微笑んでいた。  ……なつみとは、菜摘と書く。子どもを作ろうと話していた日に、「女の子なら、名前は菜摘がいいわ! 可愛いでしょう?」と、永子は言っていた。  恭一はパソコンを閉じて、永子の片手をとり、子どもが振るように軽くぽーんぽーんと振った。そして自分も隣で横になった。
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