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理不尽な人事~意外な決着
「私は反対よ。
派遣なら、どの会社でも対応可能なのよ。彼女でなくてもいいじゃない。
何をして辞めたか、忘れたわけでないわよね」
花野には珍しい荒れた口調だと、和香は思った。
責められた幸子の表情も滅多に見ないものだ。
「もちろん憶えてるわ。
でも、あの後、破棄になったそうよ。名字が違う理由は知らないけど、独身なのは確認済。
だから、あの時のような騒動にはならないわ。
引継ぎがないんだから、うちの仕事を知ってる人なら助かるじゃない」
どちらの主張も分かると思った和香は、日本酒を飲みながら不穏当な会話を黙って聞いていた。
(あの時の花野は、きっとこんな気分だったのね)
五年前、前常務が社内で権力を握りつつあった頃、現社長で、当時は副社長だった男性の派閥のメンバーだった幸子と言い争いをした。
社内改革のスピードに関する認識の違いで。
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