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自分の意見を拒絶されたと感じた当時の和香は、幸子を擁護しているような花野にも苛立って、二人に絶縁を告げた。
そして、二年間、業務以外ではまったく接触を持たなかった。
だが、三年前、常務の公私混同の行動の責任を負わせられそうになって……
縁を切ったはずの二人に助けられたが、正直に言えば、和香は、花野のほうに強い恩義を感じている。
晒し者になった聴取の時、副社長に対して反論を認めない説得をしてくれたことを和香は忘れられない。
もちろん、幸子が処分回避に動いてくれたことにも感謝しているが、直接見た花野に対して、やはり恩義の気持ちは強くなる。
普段は決して態度に出さないようにしているが、二人が対立するという初めての状況を見ると、さすがに仲裁の必要は感じる。
気づかれない程度に、花野へと肩入れしながら……
「前の奥さんが、派遣で復帰するって崎本くんには伝えたの?」
和香の問いかけに、幸子は気まずげに視線をそらした。
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