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大翔が本当に参加した集まりに来たのは、幸子だけでなかった。彼女の横には駿がいる。
さすがに、妻のことは心配だろう。
敵のただなか……ではないが、決して好意的に見ていない人間たちの集まりだから、自分も見学することで、少しでも雰囲気を和らげたいのだと思う。
実際、義隆はとまどっているし、花野も少し困惑した表情だ。
「たまには俺も、こういう集まりで勉強したいと思ったんです。
大翔くんの仕事の話なら、いつ聞いても面白いですから」
派閥活動にまったく関わってない二人の男性の存在に、他の出席たちもとまどっている。
特に恭貴の表情は、かなり複雑なものだ。
自分の怒りが、先輩の出席の理由と知るからだろう。
今回の件に関して、駿はまったく無関係なので、恭貴も冷たい怒りを向けることはできない。
そんな彼を微笑ましそうに見ながら、大翔は立ちあがると軽く頭を下げた。
「デザイン課のチーフデザイナーの三谷大翔です。
今日は、デザインと原価管理について、少しお話をしたいと思ってます……」
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