初めの話

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「こら、リナ!勝手に出たら駄目でしょう!?」 奥から若い女性が出てくる。 「お、コト。このちびは娘か?」 「はい、、、申し訳ございません、、、。」 どうやらリコの言っていた弟子というのはこの人のことらしい。 元気でいいな、とリコは笑う。 その笑顔に、少しだけ私と同年代の少女の姿が見えたのは、きっと気の所為だろう。 コト、と呼ばれたその女性は、栗色の髪を一つにまとめていて、丁寧なのになぜか、がさつなリコと似た雰囲気があった。 女性は泳いでいた目を私に固定する。 「その子は、、、?」 「ん?ああ、こいつ?拾った。」 私は小さくため息をつく。 「、、、先生らしいですね。また気まぐれ、ですか?」 また、 「まあな。」 クククと気味の悪い笑い声を放つ。 こいつは、本当に、笑うことしか知らないのだろうか? これと共に数年は旅をしたであろうハヤテを気の毒に思う。 これだけ笑われていては落ち着いた旅などあったものではない。 私はまだ一週間しか旅について行っていないが、あと何ヶ月か、下手をすれば何年もこいつと共に旅をするなどと考えると気がおかしくなりそうだ。 「立ち話もなんですし、どうぞ中に。」 奥の部屋に招かれる。 中は外から見たとおり少し広々としていて、私の家との違いにずいぶん驚いてしまう。 コトさんが座り、その向かいにリコが図々しく足を組んで座る。 先程の少女、、、リナちゃんが、隅で絵を書いて遊んでいるのが見えた。 私は少し背を丸めてリコの隣に座る。 「お名前は?」 「、、、アルカです。」 優しい声色に、取り敢えず少し肩の力を緩めて答える。 「先生は、いつからこの子を?」 「ああ、確か一週間ぐらい前だったと思うけど。」 「なら、先生の騒がしさにはまだ慣れないかな?」 ふふっと笑う女性にリコがそんなに?と苦笑する。 「コトさんも、リコと旅してたんですか?」 「私も、アルカちゃんと同じで拾われたからね。」 さっき言っていた、また気まぐれ、という言葉はそういう意味だったのか。 「先生は本当に、色んな子を拾いますよね。」 「でも引き取り手が見つかったらすぐ引き取ってもらってる。お前だって、愛想がいいからたった半年で引き取り手が見つかっただろ。」 「私はもう少し旅を続けてても良かったんですけどね。」 「さっき騒がしいって言ったよな?お前」 「さあ?」 「お前一応私は先生だぞ。」 ぽんぽんと交わされる会話をぼーっと聞いていた。 多分私は何年経ってもリコとこんなふうに会話出来ないだろう。 引き取り手が見つかったら、この旅から離脱できる、、、。 でも半年か、そんなに掛かるんだ。 しかも私は無愛想だから、最低一年はかかるだろう。 考えただけで嫌な気持ちになる。 そもそも私がリコの旅についていく意味、あるっけ? そう考えるのは、やめておいた。
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