6人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう行ってしまうんですか?こちらで泊まっていかれては、」
玄関で靴を履く私達に寂しそうな目を向けてそう言ったコトさんの言葉を遮り、リコは答えた。
「私だって、何時までも寄り道してるわけにはいかないさ。それに、この先の街で宿を取っているからな。」
そういえば、と、リコは何かを思い出したように封筒を取り出し、コトさんに差し出した。
手紙、だろうか?
「よろしくな。」
「、、、はい。」
受取るコトさんの手は小刻みに震えていた。
なんで震えてるんだろう、そう考えるのすら億劫なくらい疲れていた。
初めて来た土地で知らない人と会うのは労力がいることを、また一つ知った。
「じゃ、また会いに来る。」
「はい。」
手を振り私達を見送る。
それに笑顔を向ける気力すらなかった。
まあ気力があったところで笑顔を作るのは下手だから無理だけど。
リコは私の手を引いて家を出た。
端から見れば親子のようにも、姉妹のようにも見えるだろう。
リコを、血の繋がりのない子供を連れた、まして人殺した子を拾った人は思えないだろう。
馬が繋がれていた場所に戻るとハヤテがブツブツと私達に文句を言う。
「お前ら、俺を置いて行くなんてどういう神経や!」
この鳥、、、ハヤテは本当に人間みたいに話す。
「うるせえ鳥は置いといて、乗れ、リコ。」
鳥じゃねえ!と騒ぐハヤテは、いつもどおりリコの肩にとまる。
私は後ろに座って、リコをがっちり掴んだ。
馬が走り出す。
初めは嫌だったこの座り心地にも慣れてきた。
日が沈みだし、辺りにゆっくりと影が落とされていく。
私はそれをぼーっと眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!