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認められること
「今日宿泊するリコという者だ。」
宿に着くとすぐリコは店員らしき人物にそう言った。
「ああ、ヒマリ様のご家族の方でしょう?どうぞこちらに。」
そっか、リコにも家族がいるんだ。
そのヒマリっていう人は、偉い人なのかな、それとも、リコの代わりに宿を取っていてくれただけ?
部屋に入ると、ふかふかのベットに身を投げた。
「お前風呂入れよ。」
「うー。」
分かったと返事しようとしたのだけど、うーっと声いう声しか出なかった。
「じゃあ私先入るな。」
そう言って風呂場に消えていった。
「ええなぁ、人間は風呂入れて。」
ハヤテがぼそりと呟く。
「、、、鳥は、お風呂に入ったらだめなの?」
水浴びをしてる鳥を見たことがあるから、てっきり入っても良いものだと思っていていた。
「入ったらいかんわけやないけど、この体になってからはどうも、お湯は苦手や。」
、、、この体になってから?
「それって、どういう意味?」
まるで初めは鳥ではなかったかのような口ぶりだ。
「ん?やから、お湯は苦手やって話や。」
「そうじゃなくて、」
ガチャ、戸が開く音がして、飛び跳ねた。
「せんせえ、いる?」
短い朽葉色の髪を揺らしながら部屋に侵入してきた女性を見つめながら、私は固まった。
しかしハヤテはまるで昔からの友人のように語りかける。
「ヒマリやんけ、久しぶりやな。」
「あ、まだ生きてたんだ、ハヤテちゃん」
けらけらと笑う女性にハヤテが怒りながら言う。
「不謹慎やな、リコなら今風呂やで。」
「へぇ〜。」
ヒマリ、先程の店員が言っていたリコの家族、だろうか。
その人の足先から頭までを見てみる。
これと言ってリコに似た所はない。
むしろコトさんが娘と言われた方がまだ分かるくらい、この人とリコは何一つ似てない。
しかも母親のことを先生と呼ぶ事などあるのだろうか?
「この子、誰?」
私の方を見て言う。
声色は明るいのに、目は冷たい。
何からなにまで、リコとは違う。
「アルカ言うんや。旅の途中で着いてきた。」
「え?まじ?また?」
また、とコトさんと同じことをいう。
まさか、、、。
「アルカちゃんね。私ヒマリ。あなたとおんなじで、昔せんせえに拾われたんだ。短い間だけどよろしくね。」
拾われた、コトさんと、私と同じ。
それなら、全然似てないのにも説明がつく。
、、、リコ、あなたは一体何人の弟子がいるの?
そう考えることに必死で、先程のハヤテの発言のことはすっかり忘れていた。
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