エイプリルフール終了のお知らせ

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 ***  その後も、地獄は続いた。人間は時に、嘘をつくことで人間関係を守っている生き物だ、というのがよくわかったと言えよう。  昼休み。私はヨハンナと、それから数名の友達と雑談していたのだが。 「ライトノベルなんてくだらないもの、わたくしが見るはずがないじゃございませんの!」 「……ヴァニエラ。数字増えたよ数字。ラノベ読むんだね……」 「宿題、みんな終わったか?あたし、あとちょっとで終わるんだけど」 「ミラ、ミラ。実は全然終わってないでしょ……」 「き、近所に出来た新しいパン屋さん?あ、ははは、まあ、そこそこ美味しかったし、つ、続くといいよね」 「ルミカ。……まずかったならまずかったって、正直に言うしかないよ今日は」 「そういうライラはどうなのよおお!あんたは宿題終わってんでしょうね!?」 「お、終わってるに決まって……あ」  ピッコーン。私の頭の上でも音が鳴った。というか、さっきから雑談しているだけで、私も含めてみんな音が鳴りっぱなしである。  数字の大小はあれ、既に学校でカウンターが出ていない生徒職員と遭遇することはほぼなくなっていた。スゴイ人だと三桁の大台に乗っている。――この学校の単位の数はいくつだったっけ、と私は遠い目をしたくなった。  なお親友のヨハンナは、さっきから机に突っ伏して瀕死の状態である。頭の上には14の文字。十四個も単位を取り戻すことなんて、現実的に可能なんだろうか。 「嘘をつくのはいけないことだって言われるけど、世の中って結構、上手に嘘つくことも必要なんだね」  はああ、と私はため息をついた。 「……エイプリルフール禁止令、解除してくれるようにみんなで頼みにいこっか。このままじゃ学校崩壊しちゃう」 「うん」 「そだね……」  私の言葉にうなずく友人達。誰一人、カウンターは増えなかった。  なお、同じことを思った生徒、教職員は何人もいたらしい。その日は理事長室に、大量の関係者が押しかけていたと追記しておく。  最初は頑なに禁止令を解かなかった理事長先生だが、翌日の四月二日、先生たちから“ほとんどの教職員の給料がマイナスになった”のと“今年は全校生徒が留年しそうなんですがそれは”と報告をされ、渋々制度を撤廃したらしい。  カウンターが5になっていた私が心底安堵したのは、言うまでもない話である。
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