エイプリルフール終了のお知らせ

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 ***  我が魔法学園は全寮制である。  つまり、日常生活はすべて学園の敷地内で行われるということだ。理事長先生の魔法の効果範囲がわからないが、恐らくは学園内でのみ効果がある可能性が高いことだろう。もしも私達が毎日外から学校に通ってきていたなら、家や通学中はほっと息がつけたかもしれない。  だが、実際は全寮制。みんな寮で暮らしていて、許可をもらわなければ学校の外に出てお買い物にも行けない始末。  何故よりにもよって今年のエイプリルフールは月曜日だったんだ、と呪わずにはいられない。土曜日日曜日だったら外に出かけて時間を潰すこともできたかもしれないのに。 「……おはよう」 「ああ、おはようヨハンナ。……大丈夫?顔真っ青だけど」 「これは大丈夫に見える?というか、ライラ、あんたも結構酷い顔よ」 「あはははは……やっぱり?」  四月一日の朝。私とヨハンナは顔を洗うべく廊下でばったり出くわした。お互い、顔が思いっきり引きつっている状態である。  エイプリルフール禁止。  ああ、エイプリルフール禁止。  普通にお触れだけにしてくれればよかったものを、何で全校生徒に“嘘ついたら単位を減らす”なんてとんでもない魔法をかけてくれたのだろう、理事長先生は。本人の負担も結構なものであるはずだというのに。そんなに去年、イケメンアイドルに結婚を申し込まれたと嘘吐かれたのがショックだったのだろうか。いやだから、なんでそれを信じたんだ六十代。 「昨日、全然眠れなかったんだよね。……気を紛らわせようと本読んでたら、ついつい夜更かししちゃって」  私はため息をつきながら、ヨハンナはどう?と尋ねた。彼女も多分あんまり眠れていないのだろう。いつも綺麗にウェーブしている茶髪が、今日はダイナマイトでも爆発したかのような有様になっている。 「ああ、うん……わたしもよ。ちょっとしか眠れなかったわ。同じく、気を紛らわせようとゲームしてたら夜遅くなっちゃって」  ヨハンナがそう言った瞬間だった。ぴっこーん、という音が彼女の頭上で響く。もしや、と思って彼女の頭の上を見た私は絶句した。
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