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『あ~。お腹が空いた』
「ママ、食べ過ぎじゃない?」
「でも、ママは産むために、食べないといけないんだよ」
「そっか、そうだね。ぼくたちもそうやって生まれたんだ。ママ、今度は何を食べるの?」
『そうね~。ソーダ飴にしようかな』
「え~っ、あれはきれいだから残そうよ」
子供たちが騒いているうちに、ママは目標に近づいて大きな口をあけた。
『いただきます』
青い飴がぐるぐる回りながら、ママの口へと吸い込まれていく。
「あ~食べちゃった。きれいだったのに」
「ママ、美味しかった?」
『う~ん。冷たい氷は融けちゃってぶよぶよね。それに、大国同士が核戦争をして放射能が溢れ返ってるから、香しさが全く無いわ」
汚染された大地では、死を待つばかり。
生き物の「せいし」が真っ暗な胎内に飛散する。
『うぇ~っ! まずいわ。何この味!』
「ママが跳ねてる。中身も高速にシェイクされてるね」
「きっともうすぐ届くよ。ほらもう一つの出口」
跡形もなく散った過去は、ブラックホールの先にあるホワイトホールから吐き出され、未来へと形を変える。
凄まじいまでの噴出はビッグバーン。新しい宇宙の誕生だ。
『いつかまた、青い星に生まれ変わってね』
慈愛のこもった声に応えるように、暗い宇宙空間に希望の光が灯った。
The End
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