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「あんた、今日でクビなんだから、さっさと荷物まとめて寮から出てってよね。」
「え!?クビって、、、、なんで」
「はぁ?仕事できない奴はいても邪魔でしょ?」
「で、でも、、、僕は彼の専属の料理人だから、、」
「皇様が本気であんたに食事の依頼するわけないでしょ?本気にしちゃって馬鹿みたい。最近あんたの代わりに僕が食事だしてるでしょ?それが美味しいってお気に召されたんだよ。」
「っ、、、(それは僕が一番分かってるけど)、、、じゃあ、せめて辞めることを一言お伝えした方が」
「専属料理人は僕が引き継ぐから心配しないで。それよりも次の仕事先さっさと探したら?じゃあね」
どうも、某球場で料理人をしていた星名です。その中で、僕の料理をお気に召してくれた球団のエース様直々の依頼で、ここ半年間はエース様専属の料理人になっていた。僕は料理にしか興味がなく、選手の事は全く把握していないけど、他の料理人は僕がエース様専属料理人になったことが気に入らないみたいで、嫌がらせが増えていた。僕は、その嫌がらせによって右手を負傷したため、しばらく仕事を休んでいたのだが、その間にエース様の専属料理人が交代したそうで・・・。まぁ、そりゃそうだよね。別に僕の料理が特別なわけじゃないし、、、、そんなこんなで仕事がなくなった僕は職場と寮を追い出された。はぁー、家無し無職になっちゃたなー。この右手だし、もう料理の仕事は無理だよな・・・とりあえずネカフェにでも行くか・・・。
「そこ、邪魔なんだけど」
「あ!も、申し訳ありません。すぐにどきますっ」
少ない私物を抱えて、どうしようかと考えていた時に声をかけられた。ここは球場の外の関係者専用の通路だ。そんな通路に座り込んでいたら確かに邪魔だよね。すぐに謝ってその場を離れようとした時に腕を掴まれた。
「ねぇ、そんな荷物抱えて何してんの?座ってたけど体調悪いとか?」
「いえ、ちょっと諸事情で寮をでたので、、、えっと、今からどこに行こうかと考えていただけです。」
「住むところがねぇの?・・・お前、家事できる?」
この人誰だろう、、、ここにいるってことは関係者なんだろうけど。全然腕を離してくれず、逆に力を込められて痛いくらい。なんなんだこの人。寮を出た理由とか、今からどこに行くのかとか質問ばっかり、、、いいからさっさと腕解放しろ。
「家事、、ですか?一応、僕はここで料理を作っていたので料理はできますが、、その他は人並みかと思いますけど、、、あ、あの!腕を離し、、「よし、行くぞ。」 ちょっ、待って下さい!どこに!?」
こいつは僕の左腕と荷物を人質にとり、「いいから黙ってついてこい。」と宣った。大きな四角い車に驚く間もなく投げ入れられ、瞬時にロックをかけたにも関わらず、運転中にも僕の腕を掴んできた。「さすがに運転中に逃げませんって!そんな死に方嫌だから、運転に集中して下さい。」と半泣きで訴えてやっと腕が解放された。不安の中到着したのは高級マンション街。地下駐車場に当たり前のように入った彼は、当たり前のように一角に停車した。え、、、何!?ここどこ!?大混乱中の僕を無視して、また腕と荷物を人質にとった彼に半ば引きずられるように連れられた。最上階の部屋にだ。シンプルだが高級感があるこの部屋。ところどころに生活感がある。ということはここって、、、、
「あ、あの、、、ここって、、、」
「あ?俺の自宅に決まってんだろー。」
「で、ですよねー。って、そうじゃなくって!なんであなたの自宅に僕は連れられてきたんでしょうか!?」
「うるさー。だってお前、住むとこも仕事もないんでしょ?だから俺の世話係にしたんだよ。」
「せ、世話係・・とは、家政婦のようなものですか?」
「何か名前が欲しいなら家政夫でいいんじゃね?でも家政夫よりももっと世話してもらうけどな。」
「???でも僕、世話とかわからないですけど、、、」
「球場のどこかの店で料理してたんだろ?俺の望みは一つ。俺の口に合った食事作ること。掃除は適当でいい。後は俺の世話をしてもらう。」
この人何なんだろ。球場の中のお店じゃなくて、選手の料理を担当してたんだけど、、、この人勘違いしてる。何よりもこの人誰だろ・・・。絶対お金持ちなのはわかったけど。
「あ、あの、、、あなたは誰なんでしょうか?あの球団の関係者ですよね・・・?」
「は?お前、あそこで働いてて俺のこと知らねぇの?」
「いや、だってずっと厨房にいますし、、その、、スポーツわからないですし、、、」
「はあー、俺は桐生 皇。あの球団の選手をしている。だから、俺は忙しいし家のことができない。つまりお前にお願いしたってわけ。わかるか?」
「(こんなところに住めるならちゃんとした家政婦を雇えばいいのに・・・)わ、わかりました。あ、僕は星名 春です。選手の方と知らず、、、失礼しました。ということは栄養面に配慮した食事ということですね。」
「栄養面もだけど、、、まずは俺の好みの食事を作ってもらえたらそれでいいわ。球団の食事はまずくて食えねぇんだわ。特に最近は酷いもんだぜ?」
「す、すみません。でも初対面ですし、、好みがわからないのですが、、、、」
「まずは、なんでもいい。好き嫌いはない。」
好き嫌いじゃないならなんなんだ・・・と思っていたら、味付けの好みにうるさいらしい。まぁ、選手だし、食事は大事だよな。しかもその大事な食事を僕に望んでるけど、僕は右手を負傷中だ。家政夫にしてもテキパキとできる状況じゃないことを伝えないと。
「あの、、、家政夫のことは理解しました。ただ、お伝えする必要があることが、、、、その、、僕は職場で嫌がらせを受けていて、、その時に右手を深く斬っちゃってですね、、、動くのは動きますが握力がまだ不完全でして、、、、その、桐生さんの望む料理が難しいかと、、、」
「治らないわけじゃないんだろ?まずはリハビリと思ってやってもらったらいい。」
「で、でも、、、、あなたはプロですし」
「じゃ、手が治るまでは違うことお願いするけどいいのか?」
「は、はい!料理もしますが完全じゃないので⋯僕にできることであればお願いして欲しいです。」
「ふーん?じゃ、行くぞ。」
「え?ちょ、ちょちょ、まっ、て!うわっ!!っ、、ここって、、、、」
「”俺の世話”してもらおうかな。」
な、なんだこの状況!?僕の右手がポンコツなことを伝えたけど、桐生さんはリハビリを提案してきた。さすがにこれで住み込み+給料をもらうのはダメだし、その前に彼はプロの選手だし、、、パフォーマンスに影響したらと考えると怖すぎる。そう思って何度も言ったけど桐生さんは折れずに別の仕事があると言ってきた。それは僕でもできることだって言うからお願いしたのに、、こ、ここって、、、寝室!?なぜ?なぜベッドに投げ飛ばされた!?混乱する僕を押さえつけた桐生さんは素晴らしくかっこいい笑顔で宣った。料理や掃除以外の世話ってこういう事!?ああああ、なんでさっきちゃんと確認しなかったんだ!僕の馬鹿!!
「待って下さい!これはどういう状況でしょうか!?」
「あ?この状況でわからない奴はいねぇだろ?俺の世話してくれるっていっただろ?」
「それは身の回りの世話のことです!」
「衣食住の他にメンタルケアも大事だと思わねぇ?」
「それは思います!精神面の安定もパフォーマンスには重要だと思おますけど⋯」
「なら精神面の安定につきあってくれるよな?」
「いや、いやいやいや!あなたお金ありますよね?そういうところに行って発散したらいいじゃないですか!」
「春にも給料払うだろ?俺の世話も含めた契約に了承しただろ?しかも俺はプロだ。変な噂が広がるようなところに行くくらいなら、ここで春を相手したほうが安全てわけ。」
「ぐっ、、、、、、で、でも、、、僕がリークするかもしれませんよ!?」
「そんな悪いこと言っちゃうんだ?ならこっちも保険をかける必要があるな。たとえば、、、春の恥ずかしい写真とか?」
「なっ、い、いやです」
「ふふ、どっちにしても抱くから。諦めて流された方が気持ちいいと思うけど?ほら・・・」
「ンんっ、触んないでっ」
「気持ちよさそうだな、服邪魔だから脱がすよ。」
「だ、だめ!!待って下さいっ!せめて、お風呂に、、、あ、いや!違う!止めましょうこんなこと!」
「ふーん?家政夫なのに主人にお風呂をおねだりするとは、、、、ま、そっちも楽しめそうだしいいよ?」
「ふわっ、ちょ、降ろしてっ、お尻揉まないでっ」
「大人しくしてねぇと落ちるぞ?楽しみだなー」
僕の馬鹿!お風呂ってなんだよ!桐生さんは僕を軽々と抱え上げ、イヤらしい手つきでお尻を撫でながらお風呂に連行された。驚くほど広いお風呂は適温に保たれており寒さはない。神業的な早さで服を脱がされたかと思ったら浴室にゆっくりと降ろされた。お風呂くらい1人で入りたいと何度も抗議したが聞き入れられず、あろうことか泡立てた素手で僕の身体を洗ってくる始末。怪しい手つきが全面に出ており、際どい部分も構わずに触れられて変な気分になってきた。
「も、もぅ、、やぁ。何で手で、、ふっ、、」
「触り心地いいし、こっちの方が春も気持ちよさそうだし?」
「もういいっ、、自分でやるから、、」
「自分で?こっちも自分で綺麗にできんの?」
「ひやぁ、、、そこっ!なんでっ」
「ここ拡げないと始まらねぇだろ?ほら、気持ちよくしてやるから手ついてお尻突き出してっ」
「こんな格好嫌ですっ!恥ずかしい、からっ、、ふわぁ、、んっ、気持ち悪い、っ」
「ははっ、全身ピンク色で可愛いじゃん春? 前も勃ってきた、気持ちいいか?」
「両方はやめてっ、、、も、もうお願い、やめて。ちゃんと料理しますから、、ふっ、、ンぅ」
「これからいろいろ世話になるし?今日は最高に気持ちよくしてやるよっ」
「ちがっ、、ああぁ、奥やだ、、、拡げないで、、、ンんん!?や、お湯!?やめ、、苦しっ、、お腹苦しい」
「中洗わねぇとな。お腹膨れてきたなー、その苦しそうな表情もたまらねぇ。ほら、苦しいだろ?出しちまいな」
「へ、変態っ、いやっ、お腹押さないでっ、、出ちゃう」
「ほら、早く出した方が楽だぞ?よし、手伝ってやる」
「や、やめっ!拡げないでっ!出ちゃ、やぁあぁああ、、はぁ、、ふっ、、」
「疲れてるとこ悪いが、次な」
「も、もう無理だってぇ!!」
こいつ本当に選手なの!?初対面なのに全裸であんな、あんな場所に躊躇せず指を・・・た、ただの変態じゃん。しかもドSだ。無理矢理お湯で後ろを洗われて故意的にではあるが何度も漏らして、、、体力的にも羞恥心的にも僕はヘロヘロだ。何度目かの洗浄と前後への刺激でイかされ、、、、そのまま意識を飛ばした。
―ちゃぷん
「ん、、?ぁ、、、」
「目が覚めたか?」
「ヒッっ、な、なん、、、お風呂?」
「春が意識とばしたから、目覚めるまで一緒に湯舟に入ってたんだ。さ、目覚めたことだし、、、、そろそろいい?」
「ちょ、、何!?へ、、それはむ、無理です!死んじゃう」
「可愛いこと言うな。気持ちよすぎて死んじゃうなんて、、期待に添いたくなる」
「言ってないっ!ま、待って、押し付けないで!ひやぁあぁ!あ、入って、くる、、、ひぇ」
「ほら、力抜いて俺にもたれかかってよ。その方がイイところにあたるから。」
「待って!お腹押さないで、、ア、ァ、、深いっ、、、揺らすなっ、んぁ、」
「はぁー気持ちいいな。わかった、わかった。そんな言うなら、動かずこのままいてやるよ。春のお願いも聞いてあげないとな。」
違う!動くなじゃなくて、抜いて欲しいんだよ!気を失って目覚めたら後ろから抱え込まれるように湯舟の中。後ろから腕を回され胸を揉まれ、逃げられない。熱をもった凶器で後ろをノックされたかと思ったらゆっくりと中に挿れられた。その感覚が気持ち悪いし怖いしで、浴槽の縁を掴んで逃げをうったが、後ろから腹部を押されこいつにもたれかかるように力をこめられた。お腹を押す力と、腰を進める勢いから挿入は深くなり、、、こいつが言う様にイイところにあたって死にそうだ。何度もお願いして動きを止めてくれたけど、何故か抜いてくれない。最奥に挿入したまま僕を後ろから抱きしめている。動いていないから疲れないはずなのに、、、何故か呼吸が荒くなってくる。抱きしめてくる桐生さんの手が僕のお腹を撫でるたびにビクッとして中のモノを締め付けてしまう。余計に中の形を意識しちゃって、、、、これは恥ずかしい。
俺の腕の中で小さくなっている春の肩がビクビクしているのが凄くクる。ビクつくたびに俺のモノを意識してるのか耳まで真っ赤で可愛い。挿れっぱなしがより感じるなんて春は知らなかったんだろうなー、あー気持ちいい。今日の俺は本当についてるな。今日もイライラしながら帰る途中に球団関係者通路でみつけた春。最初は座り込んで邪魔な奴としか思わなかっけど、料理人らしいとのことで興味をひかれた。生活も荒れてるし、最近の球団の食事は特にマズいしでこのままだと成績が悪くなる自覚もあってイライラしていた。連れ込むつもりはなかったけど家政夫なんて言われたら名案だと思った。女性を雇うといろいろと面倒だし、よく見たら可愛いし。冗談で言った俺の世話だったけど、現在進行形で数時間前の自分に感謝している。そろそろ春も限界かな?小さい声が聞こえて可愛い。カラダの相性は最高、これで食事の味が合えば完璧だな。
「ぁ、、、ンぅ、、ぁの、、もぅ終わって…」
「なーに?春が動かないでって言ったんでしょ?あ、俺のカタチ意識しちゃって恥ずかしい?さっきから春、ビクビクしてて可愛い。」
「ゃ、、、お腹撫でないで、、、ひやぁ!な、、んン、大きくしないでぇ」
「っ、可愛すぎんだろ!もう動くぞ」
「う、わぁあ、ああ、、ん、ンぅ、、ちょ…ゆっくり…はっ、苦しっ、、、も終わって…よぅ、、、」
「春気持ちいい?俺もう出そう、、、春、初めてなのにごめんね?」
「ま、まって、、出さないでっ!ゃ…ぁあ、、んぅ!速いっ、、あぁああぁあ、、ぅン」
「おっと、あぁー、また無理させちゃった。ごめんね春。」
今まで僕の中に大人しく挿っていた凶器が急に大きくなったかと思ったらめちゃくちゃに動き出した。湯舟に沈まないように縁を掴むのが精一杯で浴室には僕の喘ぎ声が響いているのに気にする余裕はない。僕を立たせた桐生さんはまた深く挿ってきた。今までと違う角度と感覚に感じてしまい手足に力が入らずガクガクだ。そんな小鹿の僕を片手で支えたかと思ったらガツガツと動き始め、一番最奥に温かさを感じた瞬間ブラックアウトした。
可愛い可愛い可愛い。こんな子と何年も一緒に働いてたなんて本当に後悔。球場のどこにいたんだろう。ま、今は僕の腕の中にいるからいいけど。全身ピンクで疲れ切ってぐったりしている春をみて無理させた罪悪感はあるけど、多幸感の方が多いい。今まで何をしてもどんな賞をとってもこんなに多幸感を得られたことはない。春をイジメてたやつらはむかつくけど、そのおかげで今日出会うことができたし、処遇は少し軽くしてやるか。このまま抱きしめておきたいけど、さすがに休ませた方が良いと思って、大事に大事にタオルでくるんで寝室に運んだ。中に出したものを掻き出すときの艶めかしい声にまた勃っちゃったけど我慢した。これ以上無理させたら本気で嫌われる、、、いや、もしかしたらもう嫌われてるかも。俺より先に目覚めた春がこっそり逃げたらどうする?あーやっぱり捕まえとかないと安心できないな。眠っている春には申し訳ないけど、横向きにした春の片足を持ち上げて挿入した。さっきまでずっと挿ってたからスムースだったが、挿った瞬間の春の感じた声に反応して、ガツガツ動きたい衝動をグッと我慢した。そのまま深く挿れたまま春を強く抱きしめて眠った。
「ん、、、こ、こは?あ、そっか僕、、、///。んうぁ!?な、なんでっ!?ちょ、、腕ほどいてっ!ぬけっ」
「はーる?朝から元気だね。そんなに力入れられると出すまで抜けないよー?」
「や、もう無理だってぇ!今でも無理なのに、これ以上したら食事つくれない!」
「それは困るなー。なら手短にいこうか」
「あぁあ、ちょ、普通に抜いてっ、、動くなぁ、ンンっ、んぁ、」
「普通になんてもったいないでしょ。まだ朝早いし大丈夫」
「大丈夫じゃないわー!!!ああ、、ぁあぁあっ、、うっ」
目覚めた僕は見慣れない天井に混乱して、昨日の痴態を思い出して羞恥心に打ちひしがれたところで後ろに挿っている違和感に気づいた。嘘だろ、、、そんなはずない!!抜け出そうとしても後ろからがっちりとまわされた腕が邪魔で動けない。寝ているはずなのに後ろの凶器は硬く大きく圧迫してくる。もう!どうしたらいいの!ごそごそと試行錯誤をしていると、突然奥を突かれてハジマッタ。起き抜けなのにガツガツと腰を打ち付けられて死にそう。力の入らない手で奴の胸を押すがそれさえも興奮するとかで余計に元気になった。そのまま最奥を攻められて、、、、一日は気絶から始まった。
またやり過ぎてしまった。眉間にしわを寄せて苦しそうに寝ている春が、、、、、可愛すぎる。そういえば昨夜、春が俺の事をドSと言っていたな。そうか、、、でも自制しないと春はベッドから動けなくなるな。とりあえず朝までは抱きしめて寝よう。
くそ!このドS変態野郎。みんな憧れのスポーツ選手がこんなんでいいのかよ。目覚めた僕を抱きしめているむかつく腕を押しのけて抜け出した。さすがの奴も疲れたのか目覚めることなく抜け出せたのはよかった。本当はこのまま逃げ出したい、、、、けど…本当に食事に困ってるみたいだし、味の好みが合わなかったら逃げ出そう。他人の家のキッチンを勝手に借りるのも罪悪感はあったけど、一応主人に家政夫認定されてるし大丈夫か。夜のうちに手配してくれたのか材料は思った以上に充実している。問題は僕の右手の握力だ。嫌がらせの時に手首を痛めて指を切ったことが原因で動かすと痛みを伴う。昨日の夜にお風呂場で、、、、強く縁を握ったせいかいつもよりも力が入らず震える始末。「これは、料理人としては致命的だな・・・」左手で包丁を扱いつつ栄養面を考えた朝食をなんとか作り上げた。いつもよりだいぶ時間がかかって、この時点で立ってることもやっと。そういえば僕、昨日ヤられたんだった、、、あぁー、だるい。本当は暖かいうちに桐生さんに食べて欲しかったけど起こしに行く体力はなく、キッチンの床に座り込んでしまった。
「ん、春?・・・え、春っ!?どこ行った?まさか逃げたっ!?」
目覚めた俺は腕の中にいるはずの春がいないことに焦った。寝室を飛び出てまず気づいたのは匂い。すごく美味しそうな匂いがリビングに広がっている。テーブルにはしっかりと朝食が準備されていることに驚いた。昨日と今日とで無理させたのに俺の為に作ってくれたのか?でも初めての春が動けるとは思えない、、、どこだ!?違う部屋を探しに行こうとした時にキッチンに座り込んでいる春をみつけた。急いで抱きかかえると意識はあるが全身が痛いらしく疲労困憊で立てないとのこと。かなり無理させた自覚はあるし、、、今日は朝食を作ってもらう予定はなかった。正直動くのは無理だと思っていた。なのに、、、、無理させた。
「こんなところに座り込んでごめんなさい。気にせず朝食とって下さい。」
「何言ってるの!ごめんね春。無理させてごめん。」
「・・・はい。僕は家政夫ですから、、、うわっ」
「本当はベッドで休んで欲しいけど、離れたくない。だからソファで休んでて。」
「ご飯とかよそえなくてごめん。次からちゃんとするんで少し休ませてもらいます。」
「うん、、、うんいいから。」
それから春をソファに寝かせてブランケットをかけた。相当疲れたのか目を閉じるとすぐに寝息が聞こえてきた。寝顔をみて安心する資格は俺にはないけど、しっかり見届けてから朝食をいただくことにした。見た目といい匂いといい食べなくても美味しいだろうということはわかるが、一口食べてみて驚いた。・・・似てる。俺が球団で専属料理人をつけていた頃の味に似ている。でも最近の味は酷くて一口も食べられないくらい味が落ちていた。でもこの味は、、、、もしかして春はあの時の俺の専属なのか!?
(―る、―、る)
「ん、、、っ、、、うぅ」
「春、その、カラダはどう?・・・俺が聞くのもあれだけど、、、」
「おかげさまで、、、眠らせてもらったので少しはいいみたいです。でも少しです。痛いのは痛いです。」
「そ、そうだよね、ごめん。」
「大丈夫ですよ。起きれそうなので、皿洗いますね。洗い物もあるなら出してて下さい。」
「な、何言ってるの!?休まないと!」
「え?変なこと言いますね、、、僕は家政夫ですよ?仕事しないと。」
「春!今は休むんだよ。今日は休暇です。それに春を休ませている間に、家事は終わらせました。だからゆっくりして下さい。」
「え、、、自分でできるなら僕いらないじゃないですか?そういえば、味付けはどうでしたか?口に合いました?」
「そのことなんだけど⋯春はあの球団で誰かの専属料理人じゃなかった?」
「あれ?よく知ってますね、言いましたっけ?僕は球団のエース様からの指名で専属料理人をしていました。でも右手が、、、、なので今は変わりの方が担当しています。」
「そう、、だったんだね。あそこの食事は昔から本当に口に合わなくてね⋯でもここ数年は少しずつ変化してきてて、たくさんある品数の中で数点は毎回食べられることに気づいたんだ。それで誰がつくったのかを聞いて、その人を俺の専属料理人にしたんだ、、、、つまり、春を指名したのは俺なんだ。」
「え、、、、僕の食事気に入って貰ってたんですね。嬉しいです。でも最近は彼に専属シフトしたんですよね?」
「何の話だ?俺がシフトするわけないだろ?最近は特に食事がまずくて、、、イライラしてるっていうのに。」
「僕にクビを言い渡した彼が今の桐生さんの専属料理人ですよ。彼は桐生さんが自分の料理をお気に召したから⋯だから僕はクビって言ってました。これからは彼にしっかりと好みを伝えないといけないですね。」
「春をイジメてた奴の料理なんて食えない。だいたい、俺は今後弁当持参だ。春がつくってくれるだろ?」
「え、、、、でも栄養面が」
「この半年作ってくれてただろ?あの時すこぶる調子よかったし、何より春に作って欲しい。」
「わ、わかりました…。でも、今日みたいにこんなされると、、、」
「わかってる。本当にごめん。今度からは休暇を考慮するよ。」
「こ、今度って、、、、?」
「俺は出会ったばっかりだけど春に惚れた。家政夫じゃなくて恋人として一緒にいて欲しい。春はまだそこまで気持ち追いついてないだろ?だからまずはカラダから攻略しようと思ってる」
「こ、恋人!?桐生さんが僕、、、え!?家政夫の仕事のひとつじゃなかったの?」
「最初は興味範囲で連れ込んだのは間違いない。でもしぐさが可愛いなーから始まっていつの間にか離せなくなった。家の中でも離れられないくらいだからわかるだろ?」
「は、恥ずかしい。僕の気持ちが落ち着くまではお手柔らかにお願いします。」
「毎日ちゃんと気持ち伝えるね。春のご飯に惹かれただけじゃないからね。先に気持ちが向いたのは春に対してだから。そこは間違わないでね。」
「わ、わかったから、もう黙って、、、、」
僕を指名した専属料理人が桐生さんという事実に驚いた。でも、僕の料理がまずくて専属を解任されたわけじゃなくて安心した。僕は家政夫としてこれから頑張ろうと思っていたのに突然の告白。昨日出会ったばっかりだよね!?凄く驚いたけど真剣に僕を休ませようとする桐生さんの表情や、気持ちを伝えてくれたところには少し惹かれた。いきなり恋人って言われても正直戸惑う、、、しばらくは家政夫のままでお願いします。それからベッドでゆっくり休ませてもらって、何とか頼みこんで夕食は作らせてもらえることになった。また倒れ込んだら大変ということで監視付きだけど、今の僕は倍以上の時間がかかるんだけどな。
気持ち伝えてしまった。昨日出会ったばっかりなのに信じて欲しいって方が難しいのに、春は受け止めてくれた。昼間は熟睡していたので心配したが、回復したのか夕食は作るといってきかない。意外と頑固なところに驚いたが嬉しかった。でも倒れられたら心臓に悪いから隣で監視することで渋々了承してくれた。自分の為に作られる料理がどうやってできているのかが気になったのもひとつだ。春は食材を次々に準備して包丁を取り出したが不思議な切り方をしている。料理人というには拙い包丁捌きであり、時間もかかっている。身体全体で押すように切っているためか、額に汗がにじんでいる。・・・はっ、そいうえば春は右手が、、、、
「春っ!やっぱりやめよう!右手が痛いんだろ?」
「っ、、、やっぱりバレますよねー。大丈夫です。お風呂場で力入れすぎたみたいで動かないんです。でも、こうして支えれば大丈夫です。朝食もたべたじゃないですか」
「(朝食の時は右手のことを忘れていた。一体どのくらいの時間をかけて作ってくれたんだ…)春、今日は、、、いや手が治るまではやめよう。」
「ダメですよ!そのために僕を雇ったんですよ?」
「今は恋人だろ!!そんなに無理して欲しくない。心が痛い」
「でも、、、、せっかく美味しいって、、、食べてくれたのに…嬉しかったの」
「春、、、分かった。包丁は俺に任せて。一緒に作ろう。」
「な、ダメですよ!エース様なんでしょう?もし怪我でもしたら、、、怖すぎます。」
「そんなヘマしないから。俺も少しは料理覚えないとだし、、、たまには春に料理つくってあげたいし。」
「うっ、、、、僕がポンコツだから、、、ごめんなさい。」
「春はポンコツじゃないよ。可愛い俺の恋人。俺が心配性なんだよ。それに、、、、なんだっけ?ドSで変態だったっけ?」
「そ、それは、、、」
「ふふ、間違ってないね。春は大変だなー。心配性で重い、ドSで変態の俺の恋人なんだから。これから大変になるだろうし、料理手伝わせてよ。」
「な、何ですかその理由、、、、なんかすでにちょっといろいろと後悔しています。」
「ははっ、でも逃がしてあげられないんだなー。」
「はぁー・・・楽しそうでなによりです。」
さすがプロ。僕の右手をテーピングで固定した桐生さんは料理の補助をしてくれるようになった。最初は恐る恐るの包丁もすぐに慣れて上達していた。ほぼ初対面のふたりで一緒に料理をつくる、、、本当だったら変な関係だけど、この数時間で落ち着ける場所になった自覚はある。桐生さんはドS変態を気に入ったみたいで堂々と手を出す宣言をする始末。しばらくは僕の右手を楯に身を守ろうと思います。
あれからテキパキと家事をしてくれて、料理はふたりで一緒に作ってプライベートがかなり充実している。お蔭で僕のスポーツ選手としての成績も上場でエースの座を維持できている。春の手作り弁当を食べ始めて、あのマズい専属料理は徐々に出されることはなくなった。衣食住と仕事は充実している今、後は精神面の充足があれば完璧だ。春の右手が治るまでは我慢するけど、その後は覚悟しててよー。なんせ俺はドS変態なので大好きな春の期待に答えないとねー。
「早く春の右手治らないかなー。」
「うっ、、、、、お手柔らかに」
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