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六花の友達
中村くんは、家こそ近所ではあったけど、学校でそんなに親しくしている子でもなかった。
六花は、どちらかというとサバサバして女っぽくない女の子たちと一緒にいることが多かった。学業成績とは無関係に、彼女たちは賢くて、ものごとの見方が深くて、言いたいことは、躊躇せずに誰にでもはっきり言う。そんな子たちと喋っていると、六花は刺激を感じて楽しかった。
くっついたり喧嘩したりを繰り返し、言ってることに裏と表があるような、ちょっと女の子っぽい女子は、面倒に感じたし、同級の男の子たちはどれもこれも、単純で、子供っぽいように思ってしまうのだ。
六花の友達たちも、心配してくれていると信じるが、彼女たちが電話を掛けてきたり、家に押しかけてきたりは決してしないことも、六花はよくわかっていた。そういうドライなところが好きでもあったのだ。友達のひとりが、短いLINEをくれただけだ。
「うちら、いつでも待ってる」
六花はそれに、うん、と短く返した。それだけだ。それだけでも気持ちが伝わってくるから不思議だ。大丈夫。大丈夫。私は大丈夫。ひとりなんかじゃない。そう思うだけで、強くなれた。
「じゃ、じゃあ。お言葉に甘えて。哲司くんには迷惑かけちゃいますけど、よろしくお願いします……。」
六花はそう言いながら、おばさんの身体をそっと引き離した。
「おばさん……。荷物が……。」
六花は少し後ろでひっくり返っているかごに近寄り、後を追ってきたおばさんと、転がった商品を入れなおした。最後にりんごをおばさんの手に直接手渡すと、
「いろいろありがとうございます。迷惑かけてごめんなさい。」
と言って、深く頭を下げ、そのままおばさんを置き去りにして、逆方向のレジに向かった。
「私って、ちょっとめんどくさい子供だよね……。」
と、独り言ちながら。中村くんのおばさんの距離の詰め方は、とてもありがたい一方で、半分わずらわしくもあるのだ。でも、そんなこと思っちゃうの、やっぱり申し訳ないと思ったし、勝手にさせてほしいと思う気持ちもあったし。
「誰に似たんだろ。」
父ちゃん? お母さん? どちらも違うような気がした。父ちゃんはひととの距離ゼロの子供みたいなひとだし、お母さんは誰とでも、たおやかに上手な距離感で付き合うことのできるひとだ。一体誰に似たんだろ。
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