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ひっそり暮らし
開け放した和室の布団に、毛布を被った父ちゃんが見える。頭は完全に毛布に突っ込んでいるけど、ごぼうみたいな脚が出ている。片足は裸足だけど、もう片方には緑と赤の格子柄の靴下を履いている。あああー。こんなことでいいのかなあ。
時計を見ると、もう午後三時過ぎだ。小学生が出歩いていてもおかしくない時間。明らかに学校に行っているはずの時間に出歩くと、おせっかいなおまわりさんに補導されてしまう。
六花は冷蔵庫を開けてみる。六花が昨日、コンビニで買ってきたおにぎりやサンドイッチはほとんど無くなっていた。うん。ちゃんと食べてはいるみたい。父ちゃんはきっと大丈夫。ほんとはもっと栄養バランス取れたものを食べないといけないんだろうけど、とりあえず、食べてるだけでも上出来、上出来。
そろそろ補給時期だなと思ったので、和室に寝ている父ちゃんに
「父ちゃん、買い出し行ってくる。財布借りるよ。」
と、声を掛けた。
「んー。」
耳を澄まさないと聞こえないような返事が返ってきた。六花は鞄に財布と鍵と、エコバッグを突っ込んで、キャップを被って出かけた。同級生やその親なんかに、うっかり出くわしてしまったら、めんどくさいことこの上ない。キャップを深く被り、できるだけ顔を隠しておきたかった。
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