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買い物
アーケードのなかに入ると、右手の二軒目がお花屋さんだった。店頭に、色とりどりの可愛らしいミニブーケがたくさん飾られている。この店は、あとで寄ろう、と六花は思った。
左手のスーパーを素通りして、六花は右五軒目の写真店に入った。
「写真紙、ありますか?」
店のおばさんに六花が声を掛けると、おばさんは一瞬はっとしたけど、すぐに笑顔に返って
「もちろんありますよ。サイズは? どのくらい?」
と訊いた。
「遺影の大きさくらいです。」
おばさんは、くしゃっと顔を歪ませた。まるで、いまにも泣きそうな顔して。そして、おいで、と言うと、六花をまるごと抱きしめた。
「いい子だね。六花ちゃんは、本当に頑張り屋さんだ。」
ぎゅっときつく抱きしめてから、身体を離した。いろんなひとに世話になっているのだ。みんなが六花を心配してくれているのだ。六花は自分のことばかり考えて、無礼だったと反省した。
「あの。お通夜に来ていただいて、ありがとうございました。」
深々と頭を下げる。おばさんは慌てた様子で笑顔を作りながら
「もちろん行くわよ。すみれさんの葬儀だもの。六花ちゃん。ひとりだなんて、思わないでね。」
と言った。六花は微笑んでみせる。
「ありがとうございます。うちには手のかかる父ちゃんがいるので、大丈夫です。おばさん、心配してくれてありがとう。」
六花はA4の写真紙を買って、店を出た。
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