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卵ってなに?
六花は向かいの卵売り場に向かう。卵十個パック、六個パック、四個パック。どれにしようか迷う。お得さで言ったらもちろん十個だけど、とても食べきれるとは思えない。六個か、四個か。間を取って、六個にしようか。そう思って、かごに入れた。
幼い頃、卵のなかには命が入っているのだと思っていた。置いておくと産まれるのだと。でも、ほとんどの卵のなかに、命は入っていない。鶏が産み落とした、タンパク質でできた、なにか。
「変じゃない? タンパク質でできたなにか、って、なに?」
六花はお母さんに訊いたことがある。
「お母さんもわかんないけど……。じゃあ、牛乳は? 牛から絞った、タンパク質の多い飲み物。」
「牛乳は、赤ちゃんの牛に飲ませるために、作られるんじゃないの? 赤ちゃん産んだばかりの牛からしか取れないって聞いたよ? 人間が飲んじゃってるけど。」
お母さんは、微笑んで小さく拍手して、
「へー。六花、かしこーい。お母さん、知らなかったあ。」
と言った。六花は釈然としない。おとななのに、知らないことがいっぱいあるの?
お母さんは六花の頭をぽんぽんと優しく叩いて、こう言ったのだ。
「知らないことを知りたい気持ちはとっても大事だし、調べたらいいと思う。先生にも訊いてみたら? でもね、六花。この世界はストローの穴よ。」
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