四十五日め

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四十五日め

 お母さんの四十九日から、五日が過ぎた。故人を悼む法要は、前倒しでやるものらしいから、正確には、お母さんが亡くなって四十五日め。ここから一周忌までは、イベントがないので、ちょっとほっとしてる。  もっとも、亡くなった理由がちょっと特殊だから、面倒なこと、いろいろあるんだろうな。私はまだ小学生だから、父ちゃんがちゃんとしてくれないと困るんだけどな。困るんだけど……ちょっと無理っぽい……。 六年生の白鷺六花(りっか)は、そんなことを思っている。 六花はあれ以来、学校に行ってない。父ちゃんも会社に行ってない。忌引き休暇はとっくに過ぎてるのに、こんなんでいいのかなあ、と六花は思っている。 担任の女の先生は、心配して家電に電話をくれたけど、六花が喋り始めたところで父ちゃんが子機を奪って、ものすごく怖い声で、わけのわからないことを喚き散らして、勝手に電話を切ってしまった。先生は懲りずに家まで来てくれたけど、父ちゃんはゴルフクラブを片手に怒鳴り散らして、追い返してしまった。先生は相当怖かったに違いない。 やりすぎだよ、父ちゃん。先生が一体なにをした。六花は思ったけど、やっぱり学校には行かなかった。先生やクラスメイトや、みんな六花のことをどう思ってるんだろう。かわいそう、なんて思っているんだろうか。どんな顔をして六花に接すればいいのか、みんな悩んでいるんだろうと思う。それに対応するのは面倒だ。いまは、それだけのエネルギーがない。六花のほうだって、どんな顔して学校に行けばいいのか、全然わからないのだ。
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