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「勃ってるの、隠したって解決しないんで」
「……っ、」
「トイレで抜いてきたらどうですか? どうせこの駅、俺ら以外いないし」
「いい……、少ししたら落ち着く、と、思うから、」
「そんなにガチガチなのに? 手で押さえてるけれど隠せてないよそれ」
はっきりそう放った言葉を後悔することはなく俺は、その男性の腕を引っ張った。
俺が気を遣えばそれはそれでこの男性に恥ずかしい思いをさせるだけだし、どうせ恥ずかしくなるのなら先の見える気遣いのほうがいい。
抵抗を見せるけれど、俺のためにも彼のためにも早く処理するのが最善だと思う。この後、学校と会社に行かなければならないのだから。
次の電車を逃してしまえば、またしばらく電車は来ないだろう。どうしても次の電車には乗りたい。
でも俺は、このままこの人を置いて行くことは心配でできないし、この後どこまで同じ時間電車に乗っているかは分からないけれど、乗っている間は不安にならないように見ておきたいし。
「立てますか?」
「……も、恥ずかし、」
「でも処理しなきゃダメじゃあないですか。次の電車が来るまでにちゃんと落ち着くかも分からないのに俺の隣で勃たせたままにしておくわけ? そのほうがあんたにとって嫌なことだと思うけど」
「……っ、」
「生理現象ですよ。俺も触られたらきっと勃つと思うし、気にする必要ないです」
もう一度強く手を引っ張ると、諦めたのか立ち上がった。
俺の身長が高いっていうのもあるけれど、肩を抱き寄せるように支えるとすっぽり腕の中に収まってしまう。
乱れた襟元を整えるために伸ばした手が首筋に当たると、汗で湿っているそこはぴたりと俺の手に吸い付いた。
男なのに白くて綺麗な肌だと、一瞬でも魅入ってしまった自分に、おかしくなってバレないように笑った。
「トイレ連れて行った後、俺だけ先にベンチに戻るんで、本当に何も気にせず処理してください」
「……はい、」
あまり清掃が行き届いていないような臭いのするトイレにその男性を連れ、鞄と一緒にトイレへと押し込んだ。
スッキリしてから出てきてくださいと釘をさせば返事の代わりにため息を返される。
カチャリとベルトが外される音を聞いて、俺はトイレを後にした。
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