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そんなに長い時間ではないものの、処理し終えるくらいの時間は待ったと思う。
いつまでも出てこない男性が心配になり、俺はトイレへと戻った。
まだ電車は来ないし、二人きりのホームは相変わらず静かだ。
「おーい、生きてますか?」
コンコンと扉を二回ノックした。
それに驚いたのか中からガタンと大きな音がして、無事は確認できた。
「まさか、このままトイレにこもっていればそのうち電車が来て俺がいなくなるとでも思ったの? 残念ながらまだ電車は来ていないし、痴漢されているのを見てしまった後にあんたを置いていけるかよ」
恥ずかしい気持ちも多少は分かるけれど、俺だってずっと心配していたくはないし、全て終わってさよならしたい。
そう言葉を続けると、グズグズ鼻を啜る音が聞こえた。
「勝手で申し訳ないんですけどね、まぁ助けたわけだしそこは俺の言うこと聞いてやってください」
「……っ、」
「で、処理は終わりました? 終わったなら出てきて。一緒に次の電車を待ちましょう」
コンコンと、再びノックする。
すると、ゆっくり鍵が開けられる音がして、少し引かれた扉の奥から男性が顔を覗かせた。
「……まだ、何も、」
「え?」
「何も、してない……」
「は?」
それだけ言って閉められようとした扉に、ギリギリのところで手を入れた。
軽く挟まれてしまい痛かったけれど、痛がる間もなく扉をこじ開ける。
ひぃっと怯える男性をさらに怖がらせるだろうなとは思ったけれど、俺もトイレの個室の中に入り、鍵を締め扉を塞いだ。
膝までは下げられているズボンに、染みのできている下着。
思いっきり触れば良かったものを、布越しに中途半端に触っただけなのだろう、起きあがったままだ。
全くこれをどうするつもりだったのか。
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