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私はただただ辛かった。
だから、私の頭の中からあなたを消したかった。
あなたとの記憶を消して、あなたと出会い変わる前の自分に戻るために。
消してしまわないと、辛かった。
悲しくて、あなたを失ってしまった自分が、これから先の長い時間をどうやって生きていけるのかを、考えても考えても、結論が出なかった。
あなたを消してしまわなかったら、私は壊れてしまうと思った。
でも、あなたを消すことはできなかった。
私の記憶の中のあなたは、苦しそうな顔をしていた。
それは、別れ話をした時の顔。
笑顔で、楽しそうに話していたあなたの顔の方が、私は多く見ているはずなのに。
笑顔のあなたは私の記憶の中ではもう薄れてしまっていた。
消したいと願っていたけれど、でも消してしまいたくなくて必死に思い出そうとした。けれど、日に日に笑顔のあなたは減っていった。
代わりに残ったのは苦悶の顔。
消えてほしかったあなたは残った。
私に別れを告げる、苦しくて、悲しそうな顔。
思い出す度に、辛い思いをする。
ふとした瞬間にあなたの顔が浮かんできて、その度に私も記憶の中のあなたと同じ表情を浮かべた。
あなたとの出会いは、私にとって運命だった。
あなたという人は、私にとって運命の相手だった。
あなたと出会う前の私は、私にとってこの世で1番大嫌いな人だった。自分の事をどうしても好きになれずに、いつも自分を卑下してた。
そんな私を、あなたは消してくれた。
あなたと出会ったことで、私は変わった。
一目惚れだった。
先に席に着いていた私は、その教室に入ってきたあなたに見とれていた。
そんなあなたが私に声をかけてくれた。
そのまま連絡先を交換して、ご飯を食べに行って、綺麗な観覧車に乗った。
奇跡だと、運命だと思った。
全て神様が仕組んだのかと思うくらいタイミングができすぎていて、どこへかも分からず感謝した。
あなたとお付き合いを始めたことで、私は変わった。
あなたは私に、かわいいと言った。優しいと言った。
異性からそんな言葉をかけられるのは初めてで、初めは疑ってかかってた。ごめんね。
でも、何度も何度もその言葉をかけてくれて、私はあなたの言葉に嘘がないことを知った。
あなたは本当に、私のことをかわいいと思ってくれた。人一倍優しい子だとも。
私が私のことを見てもかわいいとは思えなかったし、優しいという言葉も当てはまらないと思った。
ただ、あなたのことは信じていた。
だから、あなたが言う言葉が嘘にはならないように、第三者の人たちから、あなたが嘘をついていると思われないように、私はあなたに誇れる人になろうと誓った。
だから、私は今までの自分を、自分の中から消して新しい自分になった。
自分のことを必要以上に卑下せず、あなたが私のことを必要としてくれているという事実を受け止めて。
終わりは急だった。
もう、好きじゃない
そう言ったね。
私は、あなたと離れたくなかった。あなたを失うことが怖かった。いつか、記憶の中からあなたが消えてしまうことを恐れた。
でも、あなたは頑なだった。
私は理由を聞いたけど、あなたは、冷めてしまった。もう好きじゃなくなった。私の嫌なところは本当に何一つもないと、そう言った。
私はあなたのそういうところが好きで、嫌いだった。
私がなにかしてしまったのなら、原因があるなら戻れると思った。でも、そんな隙すら残してくれなかった。
本当は、すごくすごく悲しくて、辛くって、怒りたかったし、涙を流したかった。
でも、私が苦しい時に慰めてくれていたあなたはもう居ないから、全部全部我慢した。
強がりだった。
私を傷つけることを分かってそう告げたあなたに、弱みである涙は見せたくなかった。
今まで迷惑をかけてきてしまったあなたに、私の事でこれ以上困らせてしまうのは嫌だった。
だから言った。
別れようって。気をつけて帰ってねって。
あなたの車を降りてから、過呼吸を起こすくらい泣いてしまった。
これからは、あなたの中に私はいなくて、私じゃない誰かをそこに置くんだと、そう思ったら涙が止まらなかった。
約2年、誰よりも一緒にいた。
あなたの最後の顔は苦しげだった。
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