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そう言う事なら、
アタシはやっぱり、
花がいいかな。
何年経って、何処にいたって
あ、桜だ
綺麗だねって、
褒めてもらえるもの。
忘れられないもの。
桜ってね、
きっと
名前のない人達の、
名前なんだよ。
きっとそうだ。
桜は、
死んだ人の栄養を吸って、こんなに綺麗な花を咲かせてるんでしょ?
死んだ人が桜を咲かせるんでしょ?
一生懸命生きた人の人生を吸うから、
綺麗な花が咲くんだよ。
花を咲かせる為に、
生きてる、その人が美しいんだよ。
その花は
アタシで、
それから
飯田くんでもあるからさ。
みんなは知ってるのかな?
こんなに綺麗な花が咲いた事を。
自分たちが、
こんなに綺麗な花を
咲かせた事を。
教えてあげたいな。
貴方の思いが、
貴方の人生が、
栄養になって、
力を与えて、
美しい花を咲かせたんだよ
って。
飯田くんの花は?
いつ咲くのかな? どこで咲くのかな?
どんな綺麗な花が咲くだろうかね?
アタシも
花を咲かせられるだろうか?
楽しみだね?
そう思わない?
自分で見ることは出来ないかもしれないけどさ。
アタシは知ってるよ。
今の貴方が、
それから、
これからの貴方が、
いつか何処か遠い所で
とっても美しい花を咲かせるのをさ。
─────
風に乗って向こうに行きかけた花びらが、
思い出したように戻ってきて、
優しく労るように、
飯田くんと
アタシの肩にヒラリと乗った。
【花咲かす人 ー 完】
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