花咲かす人

飯田って言ってたな。

何だ、
飯田くんか。

同じ学科の、
いつも、一番前の席に座ってる。

て事は、
あそこにいるのは
近田くんとか、園川くんのグループか。

目が悪いのに、
お母さんから眼鏡を掛けるなって
言われてる。
でも、コンタクトは体質に合わないからな。

だからアタシも、
授業では前の方に座るけど、
飯田くんみたいに一番前に座る勇気なんかない。

「あいつ、遅えーな」

あの声は多分、
近田くんか。

遅くはないのに。
片道十分掛かるのに。
まだ、十分しか経ってないのに。

また、笑ってる。
何がそんなに面白いんだろう。
よくそんなに笑えるな。

あの人たちは、
あんな風に笑ってるんだから、
きっと幸せなんだろうな。

アタシも、
あんなに笑えたら、
幸せを感じるんだろうか？

飯田くんは、
どうして笑わなかったんだろう？
みんなと、
私と
飯田くんの、
面白いや、楽しいや、
幸せは違うんだろうか？

花びらがフワフワと
風に飛ばされて行く。

みんなが笑うのと
同じタイミングで

あっちに行ったり
こっちに行ったり
風任せ。

桜の花びらに
意思なんかないもんな。