はやたくんの勘違い

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 はやたくんとのおつき合いが始まった。はやたくんが俺の家に来てくれたり、俺がはやたくんの部屋に遊びに行ったりする。買い物や遊びに行くこともある。  キスまでの清いおつき合いをしながら頭に浮かぶのは「心づもり」のこと。  はやたくんとそういうことをしてみたい気持ちはある。彼もきっと同じだと思う。でもそこに進んだらずっとそばにいたくなりそうで怖い。  大学生のはやたくんと高校生の俺。そばにいたくてもいられないときがある。  もちろんはやたくんは俺に寂しい思いをさせないようにと頻繁にメッセージをくれるしビデオ通話もしてくれるけれど、それでは足りなくなりそうな自分がいる。 「はやたくん、スマホ鳴ってるよ」 「友達だから大丈夫。たぶん課題のこと」 「ふうん……」  画面に表示されていたのは女の人の名前だった。友達だろうか。大学には綺麗な女の人がたくさんいるのだろうな、と考えたらふっと不安が心に過り、負けたくないと思った。 「……今日、泊まっていってもいい?」 「澄人?」 「心づもり、できてるから」  負けたくない、負けたくない、負けたくない。  ただそれだけしか頭になくてはやたくんに抱きつく。 「どうした?」  はやたくんは様子がおかしいことにすぐ気がついたようで、髪を撫でてくれる。 「どうもしない」 「言いたくないか?」 「……」  俺が言いたくないと言えば無理に聞き出したりしないだろう。そういうはやたくんの優しさを知っている。でもそれもすっきりしない。 「……大学って綺麗な女の人たくさんいる?」 「まあ、いるのかな。全然興味ないけど」  やはり綺麗な人がたくさんいるのだ。胸がぎゅっと絞られるように苦しい。 「さっきのお友達も綺麗な人?」  その質問で俺の真意を感じとったようで、そっと頬にキスをくれた。 「嫉妬?」 「……」 「澄人?」 「……負けたくない」  ぎゅうっときつく抱きついてはやたくんの胸に額をぐりぐり押しつける。そんな俺を抱き留めて背中をさすってくれる。 「澄人が可愛すぎて俺が負けそう」  はやたくんが負ける、の意味がわからなくて顔を見あげると鼻の先にちゅっと唇が触れた。頬をつつかれて首を傾げる。 「どういう意味?」 「食べたいってこと」  俺が抱きつくよりさらにきつく抱きしめられ、苦しい、と腕を叩くとすぐに解放されて息を吐き出す。 「はやたくんは俺でいいの?」  つい不安になって聞いてしまう。 「澄人がいい」 「俺、綺麗な女の人に負けてない?」 「澄人の圧勝」  俺の気持ち舐めるな、と額を指でぐりぐり押される。痛いのにくすぐったくて口元が緩んでしまう。 「俺、圧勝できるんだ?」 「できる。誰も敵わない」  よかった……そう思いながらはやたくんの胸に頬をすり寄せたら肩を掴まれ剥がされた。 「なんで?」 「今まずい」 「なにが?」 「大人の事情がある」  わずかに頬を朱に染めるはやたくんが可愛くて、もう一度胸に頬をすり寄せる。 「……じゃあ、大人なこと、教えて?」  言ってみて自分で恥ずかしくなる。笑われるかと思ったが、はやたくんは少しも笑わず、むしろどんどん真剣な表情になっていく。 「澄人は馬鹿だな」 「なんで、ひどい」 「そんなことを言ったらどうなるか、教えてやる」  ひょいと横抱きにされてベッドに運ばれる。今さらどきどきしてきたけれど、引き返したくない。離れられなくなったら、離れなければいいのだ。毎日、学校が終わった後でも会いに来ればいい。 「澄人、泊まってくだろ?」 「……」  どくんどくんと心臓の音が耳に響く。熱いものが灯った瞳に胸がせつなく疼く。 「まあ、帰すつもりなんてないけど」  唇が重なり、歯列を舌でなぞられる。そっと口を開けると口内に滑り込んできたものに舌を絡め取られた。大人なキスに眩暈がする。息継ぎの仕方がわからないでいると、はやたくんが唇を離す。 「困るな。全部が可愛い」 「はやたくんにだけだよ」 「あたりまえだ」  服を脱がされ、肌を撫でられる。首元や鎖骨に唇が触れる淡い感覚にふるっとひとつ身震いしてはやたくんの髪に指をさし込む。俺だけが脱いでいるのが恥ずかしくてはやたくんのシャツの襟を引っ張ると、願いどおり服を脱いでくれた。 「ん……」  肌へのキスがくすぐったくて身体を小さく捩る。はやたくんの唇が胸の突起をとらえ、ちゅっと吸われたらじわりと体温があがった。舌で捏ねるように転がされると変な感じがする。変な感じは徐々にじんとした疼きになって下腹部に響き始める。 「はやたくん……俺、なんか変……」 「どういうふうに?」 「身体がむずむずする……」  もう一度身体を捩るとはやたくんの舌が胸から腹へと滑った。腰を撫でられ吐息が乱れる。はやたくんはあちこちにキスを落としながら俺のすでに昂ぶっている熱に触れた。指の腹で溢れる雫をすくい取り、やんわりと扱きながらまたキスをくれる。直接的な刺激もキスも、全部が快感でどんどん高められていく。舌も呼吸もはやたくんに絡めとられ、思考がぼやけてくる。 「はぁ……あ、あ……」  ゆっくりと追い込まれていく。身体の中で渦巻く快感が暴れ、今にも弾けそうだ。 「澄人……」 「あっ」  昂ぶりを扱きながらもう片方の手が奥まったところへ移動する。隠れた部分をなぞられると緊張してしまう。指で入り口を撫でられ、少し押される感覚にひとつ息を吐き出す。 「澄人、大丈夫か?」 「うん……」 「……やめとく?」  気遣う瞳に首を振る。ここまできて引き返したくないし、はやたくんが欲しい。  でもそれをどう伝えたらいいかわからなくて、開いている両脚をさらに広げてすべてを晒す。 「怖かったら言えよ」 「大丈夫。怖くないよ」  キスをもらって力が抜けると指が中へ入り込む。違和感に眉を顰めたら眉間に唇が触れた。まっすぐな瞳が俺に向けられ、そっと唇が重なる。じっくりとほぐされ、円を描くように指が動く。指が増やされたのを感じて深呼吸をする。奥へと進んできた指先が内壁の一点を掠めると、言いようのない甘い快感が湧きあがった。 「あっ、あ……やだ、そこ……」 「ここ?」 「だめ、そこだめ……」  シーツを乱し、脚が突っ張る。内腿が引き攣り仰け反ると、せりあがってきた欲望が出口を求めてまたも暴れ始める。甘ったるい声が唇から零れていき、昇り詰めそうで達せない感覚に涙が滲む。自分で昂ぶりに触れようとしたらはやたくんの手に止められた。 「いきたい?」 「意地悪しないで……」 「だって澄人めちゃくちゃ可愛い」  強弱をつけて扱かれ、あっという間に昂ぶりが弾けた。胸を喘がせてはやたくんを見ると、その手が白濁で汚れていて頬が猛烈に熱くなる。 「ご、ごめん……」 「なんで謝るの?」 「だって……」  はやたくんはティッシュで手を拭い、唇を重ねてくれた。甘いキスに瞼をおろす。 「……はやたくんも」 「うん。挿れていい?」 「……うん」  両脚を持ちあげられ、はやたくんの熱が後孔にあてがわれる。どきどきしながらもう一回キスをもらってできる限り力を抜く。 「んっ、あ……っ」  指とはまったく違う熱さと質量に身体が強張る。はやたくんは動きを止め、髪を撫でながらキスを何回もくれる。深呼吸して頷く。 「好きだよ、澄人」 「うん。俺もはやたくんが好き」  キスを交わしながらひとつに繋がる。抱きしめ合い揺さぶられて、自分が自分ではなくなっていく。こんな声は出したことがないし、誰にも見せたことのないところまではやたくんに見せている。思考が働かなくなって、ただはやたくんだけを感じる。  奥まで貫かれて仰け反る俺の喉にはやたくんが舌を這わせると、そのまま食べられてもいいような気持ちになる。ただただ気持ちよくて、覆いかぶさる身体に腕をまわしてしがみついた。  はやたくんの動きが速くなる。切羽詰まったような動きに俺もどんどん高みへ追いあげられていく。一際深くを穿たれ、限界に身体が強張り弛緩した。中の昂ぶりがいっそう膨らみ、欲望を吐き出すのを感じる。 「はやたくん……」  俺を見おろす人が愛おしくて、そっと頬を撫でるとその手を握って指先にキスをくれた。 「澄人、好きだよ」 「うん……」  汗ばんだ肌がぴたりとくっつき、心も身体もひとつにしていく。体温を溶かし合うように肌を寄せ合い、唇を重ねた。
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